改訂新版 世界大百科事典 「ヤブレガサ」の意味・わかりやすい解説
ヤブレガサ
Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
種子中の幼植物が多くの双子葉植物のそれと異なり,やや円形に近い1枚の葉しかもたないという,きわめてユニークな特徴をもってはいるが,まぎれもなくキク科の多年草である。朝鮮半島から九州,四国,本州にかけて分布し,山地の林縁や粗林の林床にときに群生する。冬に地上部は枯れ,春にすぼめた傘のような形で土の中から葉が出てくる。花茎の伸長しない株では,楯つきの葉が1枚,傘を開くような状態で展開する。葉身が掌状に深裂しているので,まさに破れ傘である。花茎が伸長する株では,普通2枚の茎葉をつける。下の葉は楯状につき,上の葉は底着となる。花期は7~10月。茎頂にたくさんの頭花を円錐花序につける。近縁のホソバヤブレガサS.aconitifolia(Bunge)Maxim.は,中国中東部~東北部,朝鮮半島に分布する。葉身の掌状に深裂した裂片がきわめて細く,頭花が散房花序につく点でヤブレガサと区別されている。
執筆者:小山 博滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報