ヤブレガサ(その他表記)Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.

改訂新版 世界大百科事典 「ヤブレガサ」の意味・わかりやすい解説

ヤブレガサ
Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.

種子中の幼植物が多くの双子葉植物のそれと異なり,やや円形に近い1枚の葉しかもたないという,きわめてユニークな特徴をもってはいるが,まぎれもなくキク科多年草である。朝鮮半島から九州,四国,本州にかけて分布し,山地の林縁や粗林の林床にときに群生する。冬に地上部は枯れ,春にすぼめた傘のような形で土の中から葉が出てくる。花茎の伸長しない株では,楯つきの葉が1枚,傘を開くような状態で展開する。葉身が掌状に深裂しているので,まさに破れ傘である。花茎が伸長する株では,普通2枚の茎葉をつける。下の葉は楯状につき,上の葉は底着となる。花期は7~10月。茎頂にたくさんの頭花円錐花序につける。近縁のホソバヤブレガサS.aconitifolia(Bunge)Maxim.は,中国中東部~東北部,朝鮮半島に分布する。葉身の掌状に深裂した裂片がきわめて細く,頭花が散房花序につく点でヤブレガサと区別されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤブレガサ」の意味・わかりやすい解説

ヤブレガサ
やぶれがさ / 破傘
[学] Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は高さ1メートルに達する。茎葉は柄があって2、3枚が互生し、葉身は掌状に7~9裂し、裂片はときにさらに中裂する。上葉は葉柄が底着するが、下葉は葉柄が盾のようにつく。ヤブレガサの名は、これを破れた傘を広げた形に見立てたことによる。7~9月、茎頂に大形の円錐(えんすい)花序をつくり、多数の頭花をつける。頭花は約10個の白色の管状花からなる。総包は淡緑白色で筒状、総包片は5枚。種子内の幼植物の子葉が円形で1枚しかない点で、きわめて特異な種と考えられる。山地の林下に生え、本州から九州、および朝鮮半島に分布する。若芽食用とする。

小山博滋 2022年5月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤブレガサ」の意味・わかりやすい解説

ヤブレガサ(破れ傘)
ヤブレガサ
Syneilesis palmata

キク科の多年草で,北海道を除く日本各地の山地,林内に生える。地下に短い根茎があり,茎は開花時には高さ 1m前後に達する。葉には長い柄があり,直径 30~40cmもの円形で放射状に深く裂ける。柄は葉面に対して楯形につく。花は夏から秋に円錐花序を出し,その先に幅 1cmほどの細長い頭状花をつける。花冠は淡紅色を帯びた白色で,花後にややよごれた白色の冠毛を出す。

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百科事典マイペディア 「ヤブレガサ」の意味・わかりやすい解説

ヤブレガサ

キク科の多年草。本州〜九州,朝鮮半島の温〜暖帯の山地の木陰にはえる。茎は高さ70〜120cm,根出葉は長い柄があって茎を抱き,円形で径35〜40cm,茎葉は普通2枚,ともに深く切れ込む。7〜8月,茎の先に円錐花序を作り,10個内外の白色の筒状花のみからなる頭花を開く。名は,若葉がつぼめた傘を開くように出てくることにちなむ。

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