日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマコウモリ」の意味・わかりやすい解説
ヤマコウモリ
やまこうもり / 山蝙蝠
giant noctule bat
[学] Nyctalus aviator
哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。虫食性の種で、朝鮮半島、日本に分布し、日本では北海道から本州、四国、壱岐(いき)、対馬(つしま)を経て、九州までに分布する。前腕長60~62ミリメートル、頭胴長90~100ミリメートル。他の翼手類に比較して翼が狭くて長い。耳介は短くて幅が広く、耳珠はキノコ形で短い。飛膜はかかとにつく。体毛は柔らかく光沢があり、体上面の色は明るい褐色で、下面はやや薄い。平地から低山に生息し、洞窟(どうくつ)には入らない。大木の樹洞、石垣の間、ときに人家などをねぐらとし、10~30頭ぐらいの群れをつくる。夜行性で、日没前に食物を求めてねぐらを離れる。飛翔(ひしょう)速度は著しく速く、高空を一直線状に飛翔する。食物はおもに昆虫、飼育下では鳥の肉やレバーなどを食べる。6月下旬から7月にかけて、普通1子を産む。本種に近縁で前腕長40ミリメートル前後と小形のコヤマコウモリN. furvusは、岩手県岩泉(いわいずみ)町で発見された種で、尾瀬や富士山の精進口(しょうじぐち)登山道の原生林にも生息している。
[吉行瑞子]