改訂新版 世界大百科事典 「ヤムナー川」の意味・わかりやすい解説
ヤムナー[川]
Yamunā River
ヒマラヤ山脈から流れ下るガンガー(ガンジス)川の支流で,本流に匹敵するほどの大河川。ジャムナJumna川とも呼ばれる。全長1380km。発源地はウッタラーンチャル州テヘリー・ガルワール県のジャムノトリ湿原(北緯31°3′,東経78°30′)北方のヒマラヤ山脈中にあり,山中を南あるいは南西に流れ,山間盆地デーラー・ドゥーンを経て,シワリク丘陵を貫通して平野に出る。ここから100km余りを南西に流れるが,やがてデリーに向かって南流する。デリーはヤムナー川を背にして築かれたレッド・フォートの城下町であり,ニューデリーを加えた現在の発展はこの川の豊かな水に負うところが大きい。以後,マトゥラー,アーグラといった歴史都市を河畔に成立させつつしだいに東へ向きを変える。山麓からここに至る間に,東部および西部ヤムナー用水路,アーグラ用水路などの大規模灌漑水路(18世紀初めに築造され,19世紀後半に近代的施設として改造された)が引かれ,両岸の沃野を潤すが,その反面,5,6月の酷暑期には水がかれる。流路はマトゥラーからほぼ南東方向をとり,およそ550kmを流れてアラーハーバードでガンガー本流に合流する。この間,インド半島北部の水を集めてくるチャンバル,ベトワ,ソーンなどの川を合わせる。ガンガー本流との間にあるドアーブ(河間地域)は,大部分が大洪水でも浸水しない沖積台地(バンガール)であるので,パンジャーブと並ぶ穀倉地帯となっており,アリーガル,フィーローザーバードなどの都市が発達する。
執筆者:藤原 健蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報