ユトランド沖海戦(読み)ゆとらんどおきかいせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユトランド沖海戦」の意味・わかりやすい解説

ユトランド沖海戦
ゆとらんどおきかいせん

第一次世界大戦中の1916年5月末から6月初めにかけて、デンマークユトランド半島沖で行われたドイツとイギリスとの海戦。ドイツは無制限潜水艦戦を断続的に宣言したが、16年3月のサセックス号事件ののち、米独関係の悪化を恐れて、一時この作戦を中止した。中止後、内外への示威の必要から、ドイツは海洋艦隊を出撃させることを決め、キール軍港を出港したシェール、ヒッパー両提督指揮の大艦隊は、同年5月31日、ユトランド半島を回ったところで、ビーティー、ジェリコー両提督の率いるイギリス艦隊と遭遇、双方あわせて250隻の軍艦が入り乱れる激しい海戦となった。この海戦は6月5日まで続いたが、イギリス側は巡洋戦艦3、装甲巡洋艦3、駆逐艦8を失い、ドイツ側も戦艦1、巡洋戦艦1、軽巡洋艦4、駆逐艦5を失った。海軍国イギリスがこのような大損害を出したのは、トラファルガーの海戦以来のことで、国民に大きな衝撃を与えたが、他方、ドイツ海軍もこの海戦による打撃で、大艦隊を組んで出撃する力を失い、ふたたび潜水艦戦が中心となった。

[藤村瞬一]

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