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海軍力によって,敵国の領土および敵国の占領地の港や沿岸と外部との海上交通を遮断する行為で,敵国の軍艦,商船のみならず,すべての国の船舶の航行を阻止し,武器,弾薬,軍需品,食糧などの供給を遮断し,敵の戦闘能力の殲滅(せんめつ)を目的とする。元来は戦時に敵軍艦を一定の港湾に封じ込め,みかた船舶の安全を確保するための封鎖であったが,戦争における経済の役割が大きくなるにつれ経済封鎖が行われ始め(戦時に敵国に対して行う封鎖を戦時封鎖と呼ぶ),さらに平時不法行為をした国に対し,被害国が復仇として平時封鎖を行うようになった。国際法上,海上封鎖が成立し,有効と認められるには,(1)宣言告知されること(封鎖開始の日時,地理的範囲,退去期日などを定めて宣言し,中立国と封鎖地域官憲に告知すること),(2)実効的であること(実力をもって艦船の出入りを遮断できること)が必要である。封鎖を侵破した船舶は現行中に限って捕獲され,船舶と積荷は没収され,船員は釈放されるのが通例で,17~18世紀にこのような慣習が確立し,1909年ロンドン宣言によって成文化された。国際法上は,1584年オランダがスペイン統制下のフランドルの全港湾の封鎖宣言をしたのが始まりである。第1次世界大戦では機雷と水上艦船によって港湾および海峡の封鎖が,第2次大戦では潜水艦と航空機の発達によって,長距離大規模に広範域にわたり経済封鎖が行われ,海上交通破壊戦へと発展した。第2次大戦後の国際紛争においては,1950年国連軍の北朝鮮封鎖,67年第3次中東戦争のアカバ湾封鎖,70年アメリカ軍の北ベトナム封鎖,71年インドのベンガル湾封鎖,73年エジプトのバーブ・アルマンデブ海峡封鎖などがある。1962年アメリカのキューバに対する海上離隔も事実上の海上封鎖である。第2次大戦後は宣戦布告なしに,比較的小規模に海上輸送路の端末港近くで行われる傾向が強くなっており,水上艦艇,潜水艦,機雷および航空機がおもに用いられている。
→封鎖
執筆者:田尻 正司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
相手国の港または海岸への海上交通を阻止するために、海軍力によって船舶の出入を遮断することをいい、戦時封鎖と平時封鎖とがある。戦時封鎖は、交戦手段の一つとして行われ、相手国の交戦能力の向上を阻止する目的であるから経済戦の一つともされる。中立国の船舶の出入も遮断するため、中立国への影響も大きい。封鎖の成立要件としては、封鎖宣言、中立国と被封鎖地方官庁への告知、および封鎖の実効性が必要である。封鎖を侵破した船舶は捕獲され、積み荷とともに没収される。平時封鎖は復仇(ふっきゅう)や軍事的措置として行われる。この場合、第三国の船舶については臨検できるが、捕獲することはできない。
[宮崎繁樹]
…戦時において敵に属する,または敵の占領した地域,都市,港を外部とのあらゆる交通を絶つために攻(包)囲する作戦行動を一般に意味するが,海戦では,交戦国の海軍力(ときには空軍)で敵の港または沿岸部分の海上交通を妨害するための作戦をさす(海上封鎖)。海上封鎖は敵国の海上通商とくに中立国との通商の阻止をねらうもので,近世初期以降中立制度の発展に伴い,戦時禁制品制度と関連しつつ,交戦国に認められてきた交戦権の一種である。…
…戦時において敵に属する,または敵の占領した地域,都市,港を外部とのあらゆる交通を絶つために攻(包)囲する作戦行動を一般に意味するが,海戦では,交戦国の海軍力(ときには空軍)で敵の港または沿岸部分の海上交通を妨害するための作戦をさす(海上封鎖)。海上封鎖は敵国の海上通商とくに中立国との通商の阻止をねらうもので,近世初期以降中立制度の発展に伴い,戦時禁制品制度と関連しつつ,交戦国に認められてきた交戦権の一種である。…
※「海上封鎖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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