日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユビュ王」の意味・わかりやすい解説
ユビュ王
ゆびゅおう
Ubu Roi
フランスの作家アルフレッド・ジャリの戯曲。五幕散文劇。1896年初演。主人公ユビュはマクベス夫人を気どるユビュおっ母(かあ)に唆されて王位簒奪(さんだつ)者となり、貴族を皆殺しにして「お宝」を奪うが、逆に追われる身となり諸国を流浪する。「糞(くそ)ったれ」の語で始まり、全編卑語、造語、古語の飛び交うこの劇は、神秘主義的サンボリスム劇を期待した当時のブルジョアを憤激させ、一大スキャンダルとなった。従来の形式、美学、演劇性などいっさいを無視したところに、ある不条理なものの体現として成立したこの作品は、シュルレアリストを中継者として、今日イヨネスコらの、いわゆる反演劇(不条理劇)の源流とみなされ、各国で繰り返し上演されている。
[大崎明子]
『竹内健訳『ユビュ王』(1965・現代思潮社)』