日本大百科全書(ニッポニカ) 「資本利益率」の意味・わかりやすい解説
資本利益率
しほんりえきりつ
rate of return on invested capital
企業経営活動は投下した資本をどのように回収するかの過程であり、資本利益率はこの最終的な成果を測定する比率である。この指標のもっとも単純化した算式は、次のように、分母に資本、分子に利益を置いた百分率で示される。
資本利益率=利益/資本×100
これはROI(return on investment)と称され、この関連の指標を重視した経営を推進することをROI経営ということがある。
基本的には、分母の資本には、総資本(自己資本+他人資本)か自己資本を置く。それによっておのおの、総資本利益率、自己資本利益率とよばれる。また、分子の利益には、営業利益、経常利益、当期純利益などを置くことが基本で、資本との関係で適切な組み合わせを行い、経営の分析に必要な指標を計算し活用する。
総資本は貸借対照表の資産総額と一致するものであるから、ROA(return on assets)ともよばれる。この資産総額には、現実の経営活動と関係しない未利用の不動産、建設仮勘定なども含まれることから、このようなものを除いて有効に活用している資産を計算し、これを経営資本と称して利益率を計算することがあるが、この場合には分子は営業利益が適切であるとされている。
また、自己資本は、近年の会計基準改正において純資産と称されることとなったが、実質的には株主資本と同じ意義を有しており、近年のファイナンス論を基調とする財務分析では、ROE(return on equity)とよばれ重視されている。すなわち、コーポレートガバナンス(企業統治)論の台頭から、企業は株主価値(株主持分)の増進を目ざして経営をすべき意義を強調して、最終指標としての株主資本利益率の向上を重くみる傾向にある。
資本利益率の算式に売上(高)の要素を加えることによって、資本利益率を回転率と利益率に区分することができる。前者は、売上/資本で計算される資本回転率で、後者は、利益/売上で計算される売上高利益率である。薄利多売型企業と重厚長大型企業を識別できる基本の経営分析指標として活用されている。
[東海幹夫]