ゆるしの秘跡(読み)ユルシノヒセキ(その他表記)penitence

翻訳|penitence

デジタル大辞泉 「ゆるしの秘跡」の意味・読み・例文・類語

ゆるし‐の‐ひせき【ゆるしの秘跡】

カトリック教会サクラメントの一。洗礼後に犯した罪について、悔い改め、司祭告白することによって神と教会から与えられる罪のゆるし。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ゆるしの秘跡」の意味・わかりやすい解説

ゆるしの秘跡 (ゆるしのひせき)
penitence

キリスト教基本用語の一つ。聖書ギリシア語のmetanoia(悔い改め,回心)のラテン語訳paenitentiaに由来し,後に七つの秘跡(サクラメント)の一つを表す名称となった。従来はラテン語の他の言葉poenitentia(<poena=罰)などの影響もあって〈悔悛〉〈告解〉などと訳されてきたが,現代では〈回心〉〈神との和解〉,秘跡名としては〈ゆるしの秘跡〉と呼ばれるようになった。神は人間の罪を絶えずゆるそうとしている。人がこれに気づいて悔い改め,回心するとき,罪のゆるしは実現する。これを公にことばとしるしで表すことに,〈ゆるしの秘跡〉の意味がある。回心と罪のゆるしは,神の国の福音を受け入れてキリスト者となるために必要なことであり,洗礼はその最も基本的な秘跡である。その後の回心と罪のゆるしを表すために,教会には古来種々の実践があり,時代とともに変遷してきた。七つの秘跡の一つとして,罪を司祭に個人的に口頭で告白し,償いを果たすことを条件として赦免を受ける方法は,トリエント公会議(1545-63)以来この秘跡の通常の方法となった。〈告解〉という従来の名称は,この方法を表そうとしたものであり,教会法は,告白された罪の秘密が守られるよう厳しく規定している。現代では,悪の共同責任が意識されるようになり,共同回心式が勧められ,個人的告白ではなく,一般告白と一般赦免の可能性の開かれることが期待されている。〈ゆるしの秘跡〉の典礼の最も基本的な文献は《カトリック儀式書--ゆるしの秘跡》(1978)。プロテスタントでは基本的な回心は洗礼に含まれることから別個のサクラメントとして認めないのが普通であるが,近年ボンヘッファーなどの影響で罪の告白の実践が勧められている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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