ヨウ化カリウム(読み)ようかかりうむ(英語表記)potassium iodide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化カリウム
ようかかりうむ
potassium iodide

カリウムヨウ素の化合物。ヨウ化水素のカリウム塩である。ヨードカリJodkaliともいわれるが正しい名称ではない。水酸化カリウム水溶液にヨウ素を溶かし、蒸発濃縮すれば得られるが、副生しているヨウ素酸カリウムKIO3を還元するために、さらに木炭を加えて加熱する方法が用いられる。

 3I2+6KOH―→5KI+KIO3+3H2O
 2KIO3+3C―→2KI+3CO2
 工業的にはヨウ素を鉄粉と反応させてヨウ化鉄Fe3I8とし、炭酸カリウムで処理する方法が行われる。無色結晶で、水によく溶け、そのとき著しく吸熱する。水溶液は中性または微アルカリ性を呈し、ヨウ素を溶かす性質がある。ヨウ素化合物の原料となるほか、医薬として慢性関節炎、慢性リウマチ、神経痛、梅毒などの治療に用いられる。劇薬

[鳥居泰男]


ヨウ化カリウム(データノート)
ようかかりうむでーたのーと

ヨウ化カリウム
KI
式量166.0
融点680℃
沸点1330℃
比重3.13
結晶系立方
屈折率(n) 1.6670
溶解度144g/100g(水20℃)
4g/100g(エタノール20℃)
16.5g/100g(メタノール20℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ化カリウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化カリウム
ヨウかカリウム
potassium iodide

化学式 KI。ヨウ化水素酸に炭酸水素カリウムを作用させて製造する無色の立方晶系結晶。湿った空気中ではいくぶん潮解性を示す。比重 3.12,融点 680℃,沸点 1330℃。水,アルコールに可溶。水溶液は放置すると酸素により酸化され,ヨウ素を遊離し,黄色となる。写真乳剤,分析用試薬などに用いられる。消化管,皮膚から容易に吸収され,ヨウ素イオン甲状腺に集中する。甲状腺機能低下症の場合は機能を回復させ,バセドー病のような亢進症の場合には逆にこれを抑制する働きがある。そのほか,気管支粘膜分泌促進作用があり,去痰薬として使われたり,病的組織溶解作用のために第3期梅毒(→梅毒)の治療に使われることがある。副作用は急性中毒症状としては弱く,過敏性反応が現れる程度であるが,慢性中毒症状として眼粘膜,呼吸器粘膜などの浮腫皮疹,体重減少,全身衰弱などがある。複方ヨードグリセリン(ルゴール液)の場合,ヨウ化カリウムはヨウ素の溶解度を増し,ヨウ素酸の変化を防ぐ目的で用いられるものであり,薬効はない。養鶏用飼料などのなかにも 10~30ppm添加することもある。

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