日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミロース」の意味・わかりやすい解説
アミロース
あみろーす
amylose
デンプンの一成分で、アミロペクチンとともにデンプン粒を構成する。高等植物に存在し、デンプンの20~30%を占める。無味、無臭の白色粉末で、水に溶けるがエチルアルコールには溶けない。デンプンを熱水に溶かしたものにブチルアルコールを加えると、アミロースは結晶状に析出するが、アミロペクチンは溶けたままなので、両者を分離できる。また、アミロースの水溶液にヨウ素を加えると青紫色を示す。この性質はアミロースの検出に利用される。
アミロースはグルコースが鎖状にα-1・4-結合で数百個つながった構造で、グルコース6分子で1回りするようにアミロースの鎖は螺旋(らせん)形に巻いている。ヨウ素を加えると青紫色になるのは、ヨウ素がこの螺旋の中に取り込まれて特殊な存在状態になるからである。また、グルコースとグルコースの間の結合はかなり安定で、希硫酸や希塩酸を加えて数時間煮沸しなければ、この結合を完全に分解できない。しかしアミラーゼの存在下では、中性の溶液で、しかも常温で完全に分解され、マルトースやグルコースになってしまう。フォスフォリラーゼもアミロースを分解する。植物によってアミロースが合成される道筋は、以前にはフォスフォリラーゼの逆反応によると考えられていたが、現在ではアデノシン二リン酸グルコースを経る経路が主であることがわかっている。
[村松 喬]