日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨルガオ」の意味・わかりやすい解説
ヨルガオ
よるがお / 夜顔
[学] Ipomoea alba L.
Calonyction aculeatum House
ヒルガオ科(APG分類:ヒルガオ科)の不耐冬性の一年生つる草。俗にユウガオ(夕顔)ともいうが、ユウガオはウリ科の植物で、かんぴょうの原料植物であり、本種とは別種である。熱帯アメリカ原産で、高温下で旺盛(おうせい)に生育し、つるは約10メートルに達する。葉はサツマイモ(ヒルガオ科)の葉に似た心臓形で、さらに大きい。夏、各葉腋(ようえき)から長い花柄を出し、乳白色花を数個開く。花冠はアサガオ(ヒルガオ科)に似たらっぱ形で細長い筒状部があり、径約12センチメートル、日暮れに開いて芳香を放ち、ガの仲間を誘う。花は翌朝しぼみ、花期後に砲弾形の大きな莢(さや)をつける。鉢や生け垣に植え、夕刻の開花を楽しむ。種子は象牙(ぞうげ)色をして大きく堅いので、飾り物に利用する。繁殖は実生(みしょう)により、播種(はしゅ)は5月ころとする。種子は堅くて吸水しにくいので、一部に傷をつけると、よく生育する。近縁のベニバナユウガオは花は紅紫色で径6センチメートルと小さく、つるに多くの刺(とげ)がある。
[伊藤秋夫 2021年6月21日]
文化史
熱帯アジアでは一部で若葉と花が野菜として食べられている。インドネシアでは花は乾かして保存もされる。日本には明治の初めに導入された。近年はしばしばユウガオと誤称されるが、『源氏物語』のユウガオをはじめ、古来のユウガオはウリ科のヒョウタン類の花であり、ヨルガオではない。
[湯浅浩史 2021年6月21日]