ヨルガ(英語表記)Nicolae Iorga

改訂新版 世界大百科事典 「ヨルガ」の意味・わかりやすい解説

ヨルガ
Nicolae Iorga
生没年:1871-1940

ルーマニアの歴史家,政治家。モルドバボトシャニ市の生れ。ヤシ大学でA.D.クセノポルに歴史学を学んだのち,パリベルリンに留学し博士号ライプチヒ大学で取得した。1894年若くしてブカレスト大学の世界史講座の教授となり,精力的に史料収集と研究活動を行った。彼の収集史料は《フルムザキ史料集》の第10,11,12,14巻(1897-1913)に収録されたほか,彼の編纂による3巻本(1898)と25巻本(1901-16)のルーマニア史関係史料集として刊行された。彼の叙述は百科全書的な博識と独自の文体を特徴とし,研究対象は初期のビザンティン史研究から,オスマン帝国史,バルカン史研究を経て,後期のルーマニア史と世界史の研究へと展開するが,未完遺稿は普遍史の総合の試みであった。彼の史観は文化史的であり,民族主義的な色彩が濃い。政治家としては1907年国会議員となり,10年には少数党ながら民族民主党を創設し,31-32年には首相も務めたが,世界恐慌後の困難な情勢を打開できなかった。晩年は孤立しながらファシズムの流れに抵抗し,鉄衛団によって暗殺された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨルガ」の意味・わかりやすい解説

ヨルガ
よるが
Nicolae Iorga
(1871―1940)

ルーマニアの歴史家、文学者、政治家。天才児として知られ、ヤーシ大学を1年3か月で終え、19歳で卒業した。パリ、ライプツィヒに留学し、歴史学の博士号を取得。帰国後、23歳でブクレシュティブカレスト)大学の歴史学科教授に任命された。ビザンツ史の世界的権威として名声を得たが、評論、文学史的研究の分野でも精力的に活動し、彼の編集した文芸誌『種蒔(ま)く人』は、西欧的都市文明に抗して、土着的農村文化の発展を擁護した農民文学派の拠点となった。『ありし日の人々』(1934~39)は、回想記文学の傑作。保守派の政治家としても活躍したが、その反ファシズム的態度のために、ファシスト組織の手で暗殺された。

[直野 敦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨルガ」の意味・わかりやすい解説

ヨルガ
Iorga, Nicolae

[生]1871.6.17. モルドバ,ボトシャニ
[没]1940.11.28. プロイエシュチ近郊ストレジニッツ
ルーマニアの歴史家,ジャーナリスト,政治家。 1894年ブカレスト大学教授,1906年『ルーマニア民族』紙の発行を開始。 07年国会議員,31~32年国王カロル2世に操られ首相兼文相に就任。カロルと「鉄衛団」相互間のテロに巻込まれて暗殺された。ビザンチン史,オスマン帝国史,東南欧史に関する多数の著書がある。

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世界大百科事典(旧版)内のヨルガの言及

【ルーマニア】より

…また,マルクス主義の立場に立つドブロジャヌ・ゲレヤとドイツ観念論美学を背景とするマイオレスクTitu Maiorescu(1840‐1917)の2人によって近代的文芸批評も確立され,それは次の世代のロビネスクEugen Lovinescu(1881‐1943)の活動を通じて大きく発展した。
[20世紀]
 20世紀初頭,歴史家ヨルガの推進する農民文学運動の中から近代散文芸術の完成者サドベヤヌが出てその後の小説の発展に深い影響を及ぼし,その伝統の中から両大戦間期のレブレヤヌ,アグルビチャヌIon Agârbiceanu(1882‐1962),第2次大戦後のスタンク,プレダMarin Preda(1922‐80),ランクランジャンIon Lǎncrǎnjan(1928‐ ),ポペスクDumitru Radu Popescu(1935‐ ),ニヤグFǎnuş Neagu(1932‐ )らの作家が輩出した。急速な都市化や労働運動の発展とともに,都会の風俗の中に知識人をはじめ多様な階層の人間群像を描く作家たちも登場し,パパダト・ベンジェスクHortensia Papadat‐Bengescu(1876‐1955),(チェザル・)ペトレスクCezar Petrescu(1892‐1961),(カミル・)ペトレスクCamil Petrescu(1894‐1957)らの作品が高い評価を得た。…

※「ヨルガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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