ライフ・サイクル仮説
らいふさいくるかせつ
life-cycle hypothesis
F・モディリアーニ、R・ブルンバーグ、A・K・アンドーの3人の経済学者によって提唱された消費関数についての仮説。個人は、労働所得が増加する青年期や壮年期には所得以下に消費を抑えて差額を貯蓄することにより資産を蓄積し、老年期に入って所得が減少するとこれを費消して消費水準を維持する。このように、個人の消費行動は、単にその時々の所得水準をもとに決められるのではなく、その個人が一生の間に稼得する所得、すなわち「生涯所得」をもとに、生涯にわたる消費の流れから得られる効用が最大になるように決定される、というものである。この仮説は、M・フリードマンの恒常所得仮説と同じような考え方にたつものであるが、個人の消費行動が人生の各段階に応じて異なる点に着目して理論を構成しており、接近方法は異なっている。
[内島敏之]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ライフサイクル仮説
ライフサイクルかせつ
Life Cycle Hypothesis
クロスセクション (→横断面分析 ) において平均消費性向が低下することを説明するために,典型的な個人の一生の各段階において,所得と消費が共通のパターンで変動するというアンドウ,モジリアニらによる仮説。すなわち,個人の所得は人生の初期と末期には低く,中期に高くなる一方,消費水準は一生を通じて一定ないし若干の増加傾向を示すと想定される。このときクロスセクションの家計分析を行うと,高所得者は人生の中期にあたるため平均消費性向は低く,低所得者は人生の初期ないし末期にあたるので平均消費性向は高くなる。
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「ライフ・サイクル仮説」の意味・わかりやすい解説
ライフサイクル仮説【ライフサイクルかせつ】
個人の消費行動は,その個人が一生の間に消費できる所得の総額(生涯所得)の現在価値を制約条件として,長期的な効用の現在価値を最大化するような計画を立てるとする仮説。F.モディリアーニらによって主張された。若年期から壮年期にかけては所得以下に消費して将来のために貯蓄し,老年期に所得が低下するとそれを消費して生活水準を維持するというもので,この仮説に従うと,老齢化比率が高まるにつれて経済全体の平均消費性向は高まるとされる。
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世界大百科事典(旧版)内のライフ・サイクル仮説の言及
【貯蓄】より
…老後の生活,社会保障制度の充実の度合,子弟の教育費,住宅の購入資金等は貯蓄に大きな影響を与えるであろう。このように将来,あるいは一生涯にわたる所得に対する期待,消費計画を考慮しつつ現在の貯蓄が定まるという考え方が恒常所得仮説,ライフサイクル仮説である。このような考え方に立つと,将来の所得に対する期待が変化すれば,現在の所得に変化がなくても貯蓄は変化することとなる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」