ライフ・サイクル(読み)らいふさいくる(英語表記)life cycle

翻訳|life cycle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライフ・サイクル」の意味・わかりやすい解説

ライフ・サイクル
らいふさいくる
life cycle

もともとは人間の生活周期をさし、人間の一生にみられる規則的な繰り返し現象に着目し、結婚に始まる家族の形成→膨張(拡大)→縮小→消滅という過程を周期的にとらえる考え方のことである。家族の経済生活と以上の過程との間には密接な関係があり、それぞれの段階に応じて家族構造や消費構造などに特色がみられる。この考え方は、その後家族社会学、家政学、住宅学などに応用され、家庭の長期的な生活設計や福祉計画立案のために活用されるようになった。すなわち、生涯の各段階において、経済的、社会的な不安を除くための十分な体系的保障を与え、それによって各人の自助の営みを容易にしようとする生涯設計のための計画がそれである。それは、高齢者、老人身障者などの生活安定を保障し、さらに世代間の相互扶助の関係を家庭と社会の双方で再構築し、同時に教育や就業の機会を与え、国民各自の自助努力を積極的に促進しようとするものである。

[伊藤善市]

商品のライフ・サイクル

ライフ・サイクルプロダクト・ライフ・サイクルに用いる場合もある。これは製品の寿命をさす。いかなる商品もライフ・サイクルという現象を宿命的にもち、市場への導入発展成熟衰退の四段階をたどるものであり、一定の時期を越えると流行としての魅力と機能の新奇さが切り崩されるのが常である。第二次世界大戦後、技術革新と情報化の進展に伴って、新製品の開発や消費者選好の変化が加速化したため、商品のライフ・サイクルが短縮化するようになった。そのため、企業の盛衰、産業の新しい分野への進出が加速化し、競争者の新規参入が容易となった。したがって、企業の側では消費者の動向を先取りし、商品の寿命を的確に把握し、衰退期に達する前に、新商品を開発することが不可欠となってきた。このことは、情報化社会においては、生産とは物をつくることではなく価値をつくることである、ということを示すものである。

 また、これとは別に、1990年代後半以降、商品が環境に与える影響を、資源の採取、原材料の加工、商品の生産、消費、廃棄など各過程ごとに評価し、より環境負荷の小さい方法や原料を選択していこうという考え方が一般的になりつつある。この考え方をライフ・サイクル・アセスメントとよぶ。

[伊藤善市]

『今居謹吾著『ライフサイクルの理論と実際』(1980・日本能率協会)』『P・カイロ著、川島誠一郎訳『ライフサイクル 生と死の進化学』(1982・どうぶつ社)』『高橋隆一編著『新製品開発のプロジェクトマネジメント』(2000・同友館)』『橘木俊詔編著『ライフサイクルとリスク』(2001・東洋経済新報社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ライフ・サイクル」の意味・わかりやすい解説

ライフサイクル
life cycle

生活構造の繰返しのなかに示される時間的な周期的変化,生活周期ともいう。普通,生活周期は家族の成立時点から消滅時点までをみる場合に使われるので家族周期ともいう。しかし,家族の生活構造を日,月,年などの時間的過程で区切って調べられる場合や,個人の生活史ないし個人の時間的過程で区切られた生活構造を調べる場合もある。こうした生活周期を問題にした古典的研究として,イギリスの B.S.ロウントリーの『貧乏研究』 Poverty (1901) や『貧乏と進歩』 Poverty and Progress (41) が有名である。またライフサイクル計画 (生涯設計計画) という形で個人や家庭のライフサイクルの将来を予測して,それに見合う生活設計や準備をすること,あるいは国や地方自治体の福祉政策のうえで,国民のライフサイクル上の各段階に見合う施策を立てるように計画づくりをすることなどが強調されるようになってきている。

ライフサイクル
life cycle

本来は人間など生物に関する生命や細胞などの循環現象 (→生活環 ) をさすものであるが,ビジネスの分野においては,プロダクト・ライフサイクルの略ないしプロダクト・サイクルの意味として,もっぱら市場における商品の導入,普及,減退の過程をいう。商品のライフサイクルは,一般的に技術や機能などの商品のもつ実質的な価値を強調するものは比較的長く,デザイン,色彩,包装,スタイルなどの感覚的な価値を中心とした商品の場合に短いとされている。

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