日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライ麦畑でつかまえて」の意味・わかりやすい解説
ライ麦畑でつかまえて
らいむぎばたけでつかまえて
The Catcher in the Rye
アメリカの作家サリンジャーの中編小説。1951年刊。成績不良で高校を退学になったホールデンが、ニューヨークに戻りながら両親のもとに帰りにくいまま過ごす2日間のことが、彼自身の口から語られる。ライ麦畑で遊んでいる子供たちが危ない崖(がけ)から落ちそうになったとき、つかまえてやる者になりたいと語る優しさと、周囲の人物の偽善を鋭く見抜く厳しさとをもつホールデンだが、出会う人物のほとんどが大人の世界の「いんちき」に染まっていて絶望し、片田舎(いなか)へ逃げ込もうと決意する。しかし幼い妹のフィービーの無邪気な愛に救われ、広い人間愛に目覚める。少年らしい感覚と痛快な語り口で若者に迎えられ圧倒的人気をよんだ。
[田中啓史]
『野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』(1964・白水社)』