ラウンドアバウト(読み)らうんどあばうと(英語表記)roundabout

翻訳|roundabout

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラウンドアバウト」の意味・わかりやすい解説

ラウンドアバウト
らうんどあばうと
roundabout

信号機のない円形をした平面交差点の一種。交差点内の中央には円形の島があり、車両はその周辺の環道を時計回り(左側通行の場合)の一方通行で進む。交差点内では環道交通流に優先権があり、進入車両は一時停止や徐行ののち、環道交通流に沿って走行しながら方向を変える。交差点内は直進できないことから、車両の速度抑制して安全運転を促すことを主たる目的とする1車線の小規模なもの(環道外径が13メートル程度)から、複数車線をもつ大規模なもの(同40メートル以上)まで、立地条件や交通量に応じてさまざまな大きさがある。なお、同じく円形の形状をもつ交差点であっても、流入車両のほうが環道交通流よりも優先されるもの、環道交通流が信号機により制御されるもの、交差点内に駐停車機能を備えているものはロータリーなどとよばれ、ラウンドアバウトとは異なる。

 ラウンドアバウトでは、歩行者と車両が完全に分離されるうえ、車両の進入・走行速度が抑制されるため、交通事故の防止につながる。また、信号機が不要であるため費用が軽減でき、災害時に停電しても混乱しないという利点がある。しかし、大きなものでは歩行者の横断距離が長くなることや、信号がないため、視覚障害者や高齢者の横断に支障をきたすことが懸念される。

 ヨーロッパにおいては一般的な交差点形式の一つで、交差点中央に凱旋(がいせん)門のあるパリのシャルル・ドゴール広場が有名である。大量の自動車と、自転車や歩行者が通行するラウンドアバウトの導入はイギリスがもっとも早く、1960年代より導入のための調査が始められ、1993年にガイドラインが発行された。これが今日、世界各国で参照されており、近年はアメリカでの設置数が大きく増加している。国土技術政策総合研究所(国総研)の調査によれば、日本ではロータリー型とよばれる円形交差点が32都道府県に140か所ほど設けられている。しかし、ラウンドアバウトについては適用効果や運用実態を明確にした事例や基準はなく、2008年(平成20)に愛知県豊田(とよた)市の自動車専用道路のインターチェンジ、2010年に長野県飯田市などで実証実験が開始された。その後、2013年成立、2014年9月施行の改正道路交通法でラウンドアバウトは「環状交差点」とされ、設置条件や通行方法が明確に規定された。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例