日本大百科全書(ニッポニカ) 「バチカン美術館」の意味・わかりやすい解説
バチカン美術館
ばちかんびじゅつかん
Musei Vaticani
カトリックの総本山バチカンのサン・ピエトロ大聖堂に隣接する世界屈指の大美術館。ユリウス2世(在位1503~13)が古代彫刻のコレクションを教皇庁のベルベデーレの庭に展示したことに始まり、その後、歴代の教皇、教皇庁によって集められた膨大な美術品、図書、資料などが収蔵されている。美術館とよばれる部分は本館の一部と別棟の絵画館であるが、本館に含まれる図書室、フレスコ画で名高いいくつかの間、さらに礼拝堂もあわせて公開されている。
本館には『クニドスのアフロディテ』『ベルベデーレのアポロ』『ラオコーン』など古代彫刻を並べるピオ・クレメンティーノ美術館をはじめ、エジプト美術、エトルリア美術、中世キリスト教美術を展示する各美術館、『聖体の論議』『アテネの学堂』など、彼の芸術の頂点を示すラファエッロの間、回廊、それにボルジア家の間などが含まれる。絵画館はピオ6世(在位1775~99)が建造したもので、ジョットの祭壇画、メロッツォ・ダ・フォルリの『奏楽の天使』、レオナルド・ダ・ビンチの『聖ヒエロニムス』などのイタリア絵画を主に、ビザンティンから現代に至る作品を展示する。ルネサンス最大の遺産の一つシスティナ礼拝堂は、ミケランジェロの天井画と祭壇画『最後の審判』や、ボッティチェッリやペルジーノらによる壁画で装飾されている。またニコラ5世礼拝堂の壁画はフラ・アンジェリコの残したものである。なお、この美術館のあるバチカン市国は1984年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[湊 典子]