改訂新版 世界大百科事典 「ラッパチョウ」の意味・わかりやすい解説
ラッパチョウ (喇叭鳥)
trumpeter
ツル目ラッパチョウ科Psophiidaeの鳥の総称。この科はセアカラッパチョウPsophia crepitans,ハジロラッパチョウP.leucoptera,アオバネラッパチョウP.viridisの3種からなる。主としてアマゾン川とオリノコ川流域の熱帯南アメリカに分布し,ジャングルの中に生息している。全長43~53cm。3種とも体のずんぐりした鳥で,背がせむしのように丸いのが特徴。次列風切と肩羽が長く,翼をたたんでいると,体の後方に蓑状にかぶさっている。足はやや長くて太い。羽色は,3種とも体は多少とも金属光沢を帯びた紫黒色で,次列風切と肩羽は,セアカラッパチョウでは灰色,ハジロラッパチョウでは白色ないし淡黄褐色,アオバネラッパチョウでは金属緑色。
ジャングルの地上にすみ,繁殖期以外はふつう6~20羽前後の小群でくらしている。飛翔(ひしよう)力は弱く,危険がせまると木の上にとび上がるが,めったに遠くまで飛ばない。食性は雑食で,地面に落ちている果実や漿果(しようか),地表にすむ昆虫類,クモ,ムカデなどの小動物などを餌としている。野生のものの繁殖生態はまだ十分にわかっていない。飼育しているものは1腹7~8卵,雌だけが抱卵する。ウッ,ウッ,ウッ,ウッ,ウー,ウーと聞こえる独特の大きな声で,月の明るい夜によく鳴く。原住民のインディアンは,この声をまねて鳥をおびき寄せ,捕獲する。肉は美味で,また飼えばよくなれ,見知らぬ人がくると鳴き立てるので番犬がわりに使っているところもある。英名はその鳴声により,和名はその訳。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報