ラッパムシ(読み)らっぱむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラッパムシ」の意味・わかりやすい解説

ラッパムシ
らっぱむし / 喇叭虫

原生動物繊毛虫門多膜綱異毛目ラッパムシ科の1属Stentor総称。ほとんどが淡水種。体はトランペット形で、最大種の体長は3ミリメートルに達する。体表下に収縮性繊維があり、体を収縮弛緩(しかん)できる。普通、体後端部で水中の石や沈水物に付着しているが、体を卵形にして遊泳もする。体前端の口部領域を除き、体は繊毛で一様に覆われる。口部の約20本の繊毛が一列に並んで小膜adoral zone membranellaeをなし、それらが口部を2周する螺旋(らせん)を形成する。その繊毛運動で渦水流を生じ、藻、細菌、原生動物、ワムシを口部基部の細胞口から食胞へ取り込む。不消化物は口部近くの収縮胞のそばの細胞肛門(こうもん)から排出する。大核は大部分の種が数珠(じゅず)状で、紐(ひも)状や卵形の種もある。小核は大核と並置。二分裂で増えるが、娘(じょう)細胞の口部原基をつくったのち、分裂する点で独得。接合もする。色素や共生藻の有無により、青、褐色、ピンク、緑など種特有の体色を呈す。再生力が著しく、体を4分割しても大核の一部を含む細胞片はすべて完全に再生できる。最大種で、青色素stentorinをもつStentor coeruleus、共生クロレラをもつS. polymorphus、褐色で体の周囲にゼラチン様の筒をつくるS. Mülleriなど十数種知られる。

[堀上英紀]

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改訂新版 世界大百科事典 「ラッパムシ」の意味・わかりやすい解説

ラッパムシ (喇叭虫)

繊毛虫綱ラッパムシ科ラッパムシ属Stentorに含まれる原生動物の総称。有機質の多い池や沼,溝などにすみ,底土に付着しているが,ときには離れて泳ぐこともある。体長1~2mmのらっぱ形で無色,褐色,淡紅色,青色,緑色など種類によって異なる。前端には広い囲口部があり,その周縁を繊毛の小膜列からできた口帯がらせん形にとり巻いていて,その終端は口に沈下し,口から咽頭が下方につづいている。囲口部を除いた全体表には短い繊毛が密生している。大核は6~9個の楕円形の小球体がじゅず状に連なっており,小核は大核の周囲をとり巻いて多数散在する。1個の収縮胞が体の前方左側に位置する。収縮繊維がよく発達し,刺激を受けると体を収縮させて丸くなる。

 ソライロラッパムシS.coeruleusは美しい青色で,ミドリラッパムシS.polymorphusは体内に微小藻類を共生させるので緑色に見える。
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百科事典マイペディア 「ラッパムシ」の意味・わかりやすい解説

ラッパムシ

繊毛虫門原生動物の総称。体はラッパ形で,体長1〜2mm。体の表面は短い繊毛でおおわれる。体色は無色,褐色,淡紅色や青色など種によりさまざまであるが,体内の共生物のために緑色に見えるときもある。有機質の多い池沼や溝の底土にとがった後端で付着しているが,離れて泳ぐこともある。海産の種類もある。
→関連項目繊毛虫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラッパムシ」の意味・わかりやすい解説

ラッパムシ
Stentor

原生生物界アルベオラータ門ラッパムシ科ラッパムシ属に含まれる種類の総称。体長 0.08~2mm内外。体はトランペット形で全体表に繊毛をもつ。体の後端に突起があり,これで他物に付着する。前端は口になっていて,口縁には繊毛が 1列に並んで螺旋状の膜をつくっている。収縮繊維がよく発達し,刺激を受けると体を収縮させて丸くなる。無色あるいは褐色,淡紅色を帯び,種によっては体内に藻類をもつため緑色をしている。水田や池沼にすむ。

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