日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラテンアメリカ核兵器禁止条約
らてんあめりかかくへいききんしじょうやく
Treaty for the Prohibition of Nuclear Weapons in Latin America
ラテンアメリカ・カリブ地域に、あらゆる意味で核兵器から隔絶した地域を設けることを目的としている条約。メキシコ・シティの署名地にちなみ、トラテロルコ条約ともいう。1962年10月のキューバ危機を契機に、核兵器を含む紛争に巻き込まれることを懸念したメキシコなどのイニシアティブにより交渉が開始された。1967年2月に条約がまとまり署名のために開放され、1968年4月に発効した。適用地域全体での条約の発効には、ラテンアメリカ・カリブ地域のすべての国家による条約の批准、この地域に属領などをもつすべての国家、および五つの核兵器国すべてによる議定書の批准という厳しい条件がある(29条1項)。しかし同条2項にこの発効条件を放棄できることが規定されており、放棄した場合はその締約国の領域に限って条約が発効する。各国はこの仕組みを使い、順次それぞれの国家領域で条約を発効させた。最後のキューバが2002年10月に批准し、ラテンアメリカ、カリブ地域33か国すべてが締約国となった。人間の居住地域を対象とした最初の核兵器禁止地域条約で、この地域において締約国は、核兵器の実験、使用、製造、生産、管理、貯蔵、配備等が禁止される。第一議定書は、この地域に属領などをもつイギリス、フランス、アメリカ、オランダに属領などの軍事的な非核化を求めているが、対象4か国すべてが批准している。第二議定書は、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の五つの核兵器国に、締約国に対する核兵器の使用、使用の威嚇を禁止するものであるが、5核兵器国はそれぞれ留保を付しながらも批准しており、結果的に地域的な核兵器使用禁止の取り決めとなっている。
[納家政嗣]