一般に,ウラン,プルトニウム,トリウムなど原子炉の燃料として使用できる物質の総称として用いられる。日本の原子力関係法体系では〈核物質〉という語は用いず,〈核燃料物質〉((1)天然ウラン,劣化ウランおよびトリウムの金属および化合物。(2)上記(1)のいずれかを含み原子炉の燃料として使用できる物質。(3)濃縮ウラン,プルトニウムおよびウラン233の金属および化合物。(4)上記(3)のいずれかを含む物質)と〈核原料物質〉(ウランまたはトリウムの金属または化合物を含む物質で核燃料物質でないもの。たとえばウラン鉱石)とが用いられている。国際原子力機関憲章および二国間原子力協定では,上の〈核燃料物質〉に相当するものが〈核物質〉とされ,〈原料物質〉(上の(1)および(2)に相当)と,〈特殊核分裂性物質〉(上の(3)および(4)に相当。原料物質を用いるよりも容易に核兵器等を製造できる)とに分類されている。核物質が核兵器等の製造等の不法な目的に転用されないように管理することを一般に核物質管理という。計量管理と封じ込め・監視の二つの方法があり,ふつう前者が主とされ,管理の効果を高めるために後者が適宜併用される。計量管理は,核物質の受入れ,払出し等を帳簿に記録しておき,適宜実際の在庫量を測定し帳簿上の在庫量との差(不明物質量という。転用が起こらなくても測定誤差に起因し生ずる)から異常を探知するものである。封じ込め・監視は,核物質を出し入れする個所の封印の健全性をチェックしたり核物質の使用状況を監視することにより異常を探知するものである。
執筆者:林 幸秀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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