リスター(読み)りすたー(英語表記)Joseph Lister

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リスター」の意味・わかりやすい解説

リスター
りすたー
Joseph Lister
(1827―1912)

イギリスの外科医。無菌手術の創始者の一人。エセックス県アプトンの生まれ。父のジョセフJoseph Jackson Lister(1786―1869)は、色消しレンズや顕微鏡の改良で知られる。1852年ロンドン大学で学位を得たのち、エジンバラに移り、外科医ジェームス・サイムJames Sims(1799―1870)に師事した。1856年にはサイムの娘と結婚、王立インフィルマリー病院に勤務し、1860年グラスゴー大学外科教授となる。1865年、パスツール発酵腐敗も微生物によっておこるという研究にヒントを得て、化膿(かのう)は、当時信じられていたように、空中酸素や菌の自然発生によるものでないと考え、翌1866年、複雑骨折に石炭酸を用いて成果を得た。この結果は「複雑骨折および膿瘍(のうよう)の新治療法」と題して、イギリスの医学雑誌『ランセット』に1867年3月から7月まで連載された。その後さらに消毒剤や無菌法の開発に努めた。消毒腸線(縫合糸)の使用も彼による。1869年グラスゴー大学、1877年ロンドンのキングズ・カレッジの教授。1895年王立協会会長。死後記念のためリスター研究所Lister Insitute of Preventive Medicineが設けられ、イギリスにおける細菌学研究のセンターとなる。

中川米造

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リスター」の意味・わかりやすい解説

リスター
Lister, Joseph, 1st Baron Lister, of Lyme Regis

[生]1827.4.5. エセックス,アプトン
[没]1912.2.10. ケント,ウォルマー
イギリスの外科医。フェノールによる無菌手術の創始者。 1852年ロンドン大学卒業。 56年王立エディンバラ病院の外科医となり,その後グラスゴー大学,エディンバラ大学,ロンドンのキングズカレッジの外科学教授をつとめ,95年から 1900年までロイヤル・ソサエティ会長。 1897年に医師としては最初の男爵を授けられた。 65年にフェノールを用いた無菌手術を創案したが,これは,微生物が化膿や腐敗に関係し,大気中や器物に存在していることを明らかにした L.パスツールの実験を知るより数年前から進めていた研究の成果であった。 77年にはフェノール水溶液を手術室に噴霧し,また手術部位や器具や手術者の手をフェノール水溶液で消毒すると,手術による死亡率を確実に低下させうることを証明した。のちにフェノールに刺激性があることなどから,この方法は熱処理滅菌に取って代られたが,リスターの目的とした殺菌は今日の外科学の基礎として残っている。

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