非商業ベースによる文芸・思想雑誌。発行部数の大きな商業出版社によるものとは異なり,筆者の無名性,作品の実験性・反俗性,利潤の度外視などをその特徴とする。また読者は,比較的少数の知識層に限られ,刊行期間の短いものが多い。〈リトル〉といっても,判型が大きく,ぜいたくな紙を使用したものも含まれる。とくに1910年代初頭にこの種の雑誌が続出した事実は,その当時におけるモダニズム文芸の興隆と無縁ではない。〈リトル・マガジン〉の先駆としては,アメリカの思想家R.W.エマソンなどによる《ダイアル》(1840-44),またビクトリア朝の習俗に反旗を翻したイギリスの《イェロー・ブック》(1894-97)などがあった。1912年にシカゴで発刊され今も存続する《ポエトリー》,その2年後創刊の《リトル・レビュー》(1914-29)は,T.S.エリオット,J.ジョイスをはじめ,多くの現代詩人や作家を世に出すのに力があった。そのほか現代文芸の興隆に大きく貢献したものには,エリオットがロンドンで出していた《クライティーリオン》(1922-39),ニューヨークの《アザーズ》(1915-19),《ダイアル》(1920-29)などがある。1940年代から50年代にかけて一時気運は衰えたが,60年代以降おもにアンダーグラウンド小出版社による無数のリトル・マガジンが出現,1945年から70年までの間に興亡した雑誌は,英米だけでも1500誌にのぼるという。
執筆者:金関 寿夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…したがって雑誌ジャーナリズムは,大部数の商業雑誌と問題や対象を限定したミニコミへの両極へと発展していくであろう。 日本の小雑誌に相当する欧米のリトル・マガジンも変容をとげてきている。たとえばアメリカでもジョン・リードを生んだことで知られる《マッセーズThe Masses》のようなリトル・マガジンは消え,かわって大学や研究機関,雑誌社など組織に属する知識人を中心とする小雑誌になってきた。…
※「リトルマガジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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