血清リポタンパク質ともいう.血中に存在する脂質ミセルとタンパク質の複合体.脂質組成によって比重が異なるので,超遠心機を使って次の五つに分けることができる.
(1)超高密度リポタンパク質VHDL(very high density lipoprotein,密度 ≧ 1.21 g mL-1),
(2)高密度リポタンパク質HDL(high density lipoprotein,密度 = 1.063~1.21 g mL-1),
(3)低密度リポタンパク質LDL(low density lipoprotein,密度1.006~1.063 g mL-1),
(4)超低密度リポタンパク質VLDL(very low density lipoprotein,密度1.006~0.951 g mL-1),
(5)キロミクロン(chylomicron,密度 ≦ 0.95 g mL-1).
水に溶けにくい脂質を効率よく運搬するための構造体で,コレステロールに富むHDL(末梢組織→肝臓)とLDL(肝臓→末梢組織)は,それぞれ( )内の向きの輸送にかかわる.LDLは動脈硬化と深いかかわりがある.VLDLは肝臓からの中性脂肪の運搬に関与する.タンパク質部分のみをアポリポタンパク質といい,A,B,…,Eなどが知られている.このタンパク質部分が特異的な受容体に認識され,必要な細胞に脂質ミセルが取り込まれる.[別用語参照]LDL受容体
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
脂質とタンパク質の複合体の総称。大腸菌外膜の構成成分であるリポタンパク質のように,タンパク質部分と共有結合で結合した脂肪酸をもつ不溶性タンパク質もあるが,通常は血漿(けつしよう),卵黄,ミルクなどに存在する水溶性のものを指す。血漿中のものは比重の小さいものから,カイロミクロンchylomicron,超低密度リポタンパク質(VLDL),低密度リポタンパク質(LDL),高密度リポタンパク質(HDL),超高密度リポタンパク質(VHDL)に分類され,それぞれの間で脂質,タンパク質組成が異なる。いずれも中心部に非極性脂質をもち,その周囲を極性脂質,タンパク質成分が包む構造をとり,非水溶性の脂質の体内輸送に寄与している。カイロミクロン,VLDLは主成分トリアシルグリセリンの腸管,肝臓,脂肪組織,筋肉などの間の輸送に,またLDL,HDLはそれぞれ周辺組織へ,および各種組織から肝臓へのコレステロールの輸送に関与していると考えられているが,不明の点も多い。LDLの代謝および動態には,動脈硬化症との関連で近年大きな関心が寄せられている。
執筆者:川喜田 正夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…すなわち,コレステロール摂取量が増加するとHMG CoAレダクターゼ活性が低下し,内因性コレステロールの産生量が減少する。 肝臓から組織に運搬されるコレステロールは,血中ではトリグリセリド,リン脂質およびアポタンパク質といっしょにリポタンパク質と呼ばれる複合体を形成して存在している。血漿リポタンパク質は比重の差により四つの分画に分類されている。…
※「リポ蛋白質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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