リン化物(読み)リンカブツ

化学辞典 第2版 「リン化物」の解説

リン化物
リンカブツ
phosphide

リン金属元素,またはリンとリンより陽性の非金属元素(たとえば,B,Siなど)の間の二元化合物.相手の元素によりかなり化合物の性格が異なるが,一般に共有結合性は小さく,イオン結合または金属結合性に偏っている.【アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表11,12族,希土類,元素のリン化物:組成MxPyが多様なものが得られる.多くはリンと相手の各元素間の直接反応などで得られる.共有結合性より,むしろイオン結合,または金属結合性が大きい.多くは水または希酸と容易に反応して,ホスフィンを発生する.【】周期表13族元素のリン化物:B~Inでは,組成MPの立方晶系のせん亜鉛鉱型構造結晶が得られ,いずれも半導体(Ⅲ-Ⅴ半導体)である.融点1000 ℃ 以上.Tlは数種類のリン化物はつくるが,このタイプのTlPはつくらない.なお,Al,Ga,Inの混合リン化物[AlxGa(1-x)]0.5In0.5P[CAS 108730-13-8]がつくられ,高密度光学系やバーコードリーダー用などのレーザーダイオードなどに用いられている.[CAS 108424-49-3]【遷移金属のリン化物:各金属ともそれぞれ多種類のものがある.多くは金属結合性で,第4周期のものは強磁性体である.水や希酸と反応しにくいものが多い.溶けるとホスフィンを生じる.【】非金属元素のリン化物:Pと,より陰性の非金属(たとえば,H,O,Clなど)との化合物は安定で,種類も多いが,これらはリン化物とはいわない.Bのリン化物には,BP,B6P,B13P2などがある.BP(41.78)は,Al以下の周期表13族元素のリン化物と同じくせん亜鉛鉱型構造である.B-P約1.96 Å.固い赤褐色固体で,化学的に不活性で水や希酸では侵されない.半導体である.Siのリン化物には,SiH4とPH3との反応で得られるSi2Pや,さらにこれを加熱すると得られるSiPなどがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン化物」の意味・わかりやすい解説

リン化物
りんかぶつ
phosphide

金属元素またはホウ素ヒ素とリンの二元化合物。単体間の直接反応か、他のリン化物を熱分解してリンを放出させてリン化物をつくる。アルカリ金属やアルカリ土類金属のリン化物(Na3P,Ca3P2など)は、水または希酸によって加水分解してホスフィンPH3を発生する。遷移金属のリン化物は外観が金属状で硬く、加水分解しにくい。また、高融点で熱、電気の伝導性がある。組成が多様で、一般に結晶構造も複雑である。鉄にはFe3P(強磁性),Fe2P,FeP,FeP2が知られる。第13族元素とはMP型のリン化物をつくる。いずれも閃亜鉛(せんあえん)鉱型構造で半導体の性質を示す。ガリウムインジウムのリン化物は発光ダイオードレーザーなどに用いられる。

[守永健一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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