改訂新版 世界大百科事典 「リービス」の意味・わかりやすい解説
リービス
Frank Raymond Leavis
生没年:1895-1978
イギリスの批評家。20世紀のイギリスで最も影響力があった講壇批評家の一人。ケンブリッジ大学卒業後,母校の講師として教鞭をとりつづけた。作品をきめ細かく読み抜き,そこに作家全体の技巧的成熟,道徳的な健全さ,感受性の均衡を読みとり,イギリス文化全体の健康状態を診断するという姿勢が彼の批評上の信念になっていた。こうした厳格な批評態度は,19世紀のM.アーノルドから受けついだものであるとともに,20世紀という大衆文化の時代にこそ,その平均化に抗して生まれる必然性があった。リービスは自分の信念を批評誌《スクルーティニー》(1932-53)に盛りこみ,また《現代詩における新方位》(1932),《再評価》(1936)などの単行本により結晶させた。しかし,それが最も強烈に独善的なまでに主張されたのが《偉大な伝統》(1948)である。このなかで,真にイギリスらしい伝統を背負った一連の小説家(G. エリオット,H. ジェームズ,J. コンラッドなど)しか〈偉大〉と認めないと宣言した。こうした偏狭さはあるものの,文学批評の使命をこれほどまでに強く感じてそれを実践した批評家はまれだというべきであろう。著書はほかに《共通の追求》(1952),《生きている原理》(1975)など。また,妻のドロシーQueenie Dorothy Leavisも《スクルーティニー》の共同編集者,ケンブリッジ大学のフェローで,《小説と一般読者》(1932)の著書がある。
執筆者:出淵 博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報