日本大百科全書(ニッポニカ)「価値判断」の解説
価値判断
かちはんだん
事実判断に対する規範的判断の一種で、人間の行為、性格、広義の対象に、積極的、消極的評価を与える評価判断をいう。典型的な価値判断の形式は「この本はよい(悪い)」のように、評価の対象を主語とし、それに、この対象を評価する価値の述語を加えたものである。一方において評価判断には、対象の種類や関連に応じて、経済的、美的、倫理的などの区別が行われ、とくに行為に対する評価には、行為自体や行為の動機、目的などへの個別的評価に応じて、さらに区別と相互の連関が問題にされる。
他方、評価の述語にも、事物や行為の目的や動機にかかわる、もっとも包括的な「よい」または「善」を筆頭に、行為自体を対象とする「正しい」または「正」や、その他「美」「真」などが区別される。評価は事実に還元されない独自の機能をもつが、他方、評価の基準とこの基準を述べる事実判断を必要とし、また、義務、命令などの他の規範的判断との間に種々の関連と異同を示す。
[杖下隆英]