レーブリング
John Augustus Roebling
生没年:1806-69
ドイツで生まれ,アメリカで活躍した土木技術者。1837年ペンシルベニア州の土木技師となって運河工事に従事したが,ケーブルを麻製から鋼製に変える必要性に気づき,41年にアメリカで最初のワイヤロープ製造所を設立した。またつり橋型の水道橋や,ナイアガラの滝に臨む最初の鉄道用つり橋など,多くのつり橋を建設したが,とくに彼の設計したブルックリン橋(つり橋,主径間長486m)は有名である。彼は67年に同橋建設事業の主任技師に任命され,69年に工事が開始されたが,工事中の負傷が原因で急逝,このため同事業は息子のワシントンWashington Augustus Roebling(1837-1926)に引きつがれた。ワシントンは1867年にイギリスに渡り,高圧ケーソンを用いた基礎工法の研究をしており,父の死後,ブルックリン橋建設事業の主任技師となり,みずからケーソン病に冒されながらも自宅から望遠鏡で工事の監督を続け,83年に14年間に及ぶ架設工事を完成させた。レーブリング父子によって設計・監督されたブルックリン橋は,鋼製ケーブルを使用し,また橋脚の基礎工事に高圧ケーソン工法を用いるなど,近代的つり橋技術の先駆けとなった。
執筆者:佐藤 馨一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
レーブリング
Roebling, John Augustus
[生]1806.6.12. プロシア,ミュールハウゼン
[没]1869.7.22. ブルックリン
ドイツ生れのアメリカの橋梁技術者。ベルリンの工芸学校を卒業後,1831年アメリカに渡り,帰化した。ニュージャージーのトレントンで,鋼索製造会社を設立。吊橋をケーブルで架設する空中架設法を開発,1850年代から 60年代にかけてナイアガラ,シンシナティなど4つの吊橋を建設した。この方法は,直接,橋梁架設現場で,直径 5mmのピアノ線を何本も束ねてケーブルとするもので,それまでの工場製の撚線に比べて,運搬の手間が省け,撚 (よ) りの戻りによる張力の損失がなく,長くつくれるので,長大吊橋の飛躍的進歩に貢献した。その後ニューヨーク市のブルックリン橋の建設では主任技師に選ばれ,68年着手したが,工事中の事故が原因で翌年死亡した。
レーブリング
Roebling, Washington Augustus
[生]1837.5.26. ペンシルバニア,サクソンバーグ
[没]1926.7.21. ニュージャージー,トレントン
アメリカ合衆国の橋梁技術者。橋梁技術者ジョン・オーガスタス・レーブリングの長男。1857年レンセラー工科大学を卒業後,父の仕事を手伝う。南北戦争で北軍に従軍。1869年に父が死亡するとブルックリン橋建設の主任技師を引き継ぎ,特に潜函を用いた工法の開発に尽力した(→ケーソン基礎工法)。高圧環境での作業がもたらす健康障害はまだよく知られておらず,みずから重症の減圧症にかかったが,病床から指揮をとり,1883年ブルックリン橋を完成させた。
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世界大百科事典(旧版)内のレーブリングの言及
【ブルックリン橋】より
…19世紀後半,商業都市として発展し過密化していたマンハッタン島と,隣接して成長を続けていたブルックリンを結ぶ交通手段はイースト川のフェリー・ボートだけであった。ベルリン大学でヘーゲルに接して傾倒したのち,ドイツから移民して,ワイヤケーブル製造の企業化に成功し,ナイアガラ川を横断するつり橋などの実績で名声を博していた土木技術者レーブリングJohn Augustus Roebling(1806‐69)は,イースト川をまたぐつり橋の計画を提案,1867年に設立されたニューヨーク・ブリッジ・カンパニーによって建設された。技師長となって設計・監督にあたったレーブリングは,測量中の事故で負傷して死亡,長男のワシントンWashington Augustus R.(1837‐1926)が後を継いだ。…
【ブルックリン橋】より
…19世紀後半,商業都市として発展し過密化していたマンハッタン島と,隣接して成長を続けていたブルックリンを結ぶ交通手段はイースト川のフェリー・ボートだけであった。ベルリン大学でヘーゲルに接して傾倒したのち,ドイツから移民して,ワイヤケーブル製造の企業化に成功し,ナイアガラ川を横断するつり橋などの実績で名声を博していた土木技術者レーブリングJohn Augustus Roebling(1806‐69)は,イースト川をまたぐつり橋の計画を提案,1867年に設立されたニューヨーク・ブリッジ・カンパニーによって建設された。技師長となって設計・監督にあたったレーブリングは,測量中の事故で負傷して死亡,長男のワシントンWashington Augustus R.(1837‐1926)が後を継いだ。…
※「レーブリング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」