デリス(読み)でりす(英語表記)derris

翻訳|derris

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デリス」の意味・わかりやすい解説

デリス
でりす
derris
[学] Paraderris elliptica (Wall.) Adema
Derris elliptica Bentham

マメ科(APG分類:マメ科)のつる性低木で、一見フジに似ている。ミャンマービルマ)、タイ、ベトナム、マレー半島インドネシア、ニューギニア島などに分布する。枝は軟毛が密生し、横にはう。葉は奇数羽状複葉で長さ18~38センチメートル、小葉は倒卵形または倒披針(ひしん)形で、先は急にとがり、9~13個からなる。淡紅色の花は、長さ約1.8センチメートルで、大きな総状花序(長さ18~25センチメートル)をつくる。

 東南アジアでは古くから魚をとる目的で、根、茎、葉をつき砕いて河川や池に流したり、矢毒の一成分として用いてきた(これをトバtoeba, tubaと称する)。トバに用いる植物の種類は多いが、もっとも主要とされるのが本種である。また、トバは害虫に対する忌避剤、接触毒として農薬にも用いられるが、その濃度は人畜や植物に薬害を生じない程度のものである。デリスに含まれるロテノンという成分は、ごく微量で魚に猛毒を現す。ロテノンは台湾で同様の目的に使用するドクフジMillettia pachycarpa Benth.(M. taiwaniana Hayata)の根から初めて取り出されたものである。マレー半島ではマラケンシス種P. malaccensis (Benth.) Adema(D. malaccensis Prain)を、インドではナガミノシイノキカズラ(フェルジネア種)D. ferruginea Benthamをデリスと同様に用いる。

[長沢元夫 2019年10月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デリス」の意味・わかりやすい解説

デリス
Derris elliptica; derris

マメ科の大型つる植物。熱帯アジア原産。茎 (つる) はがんじょうで長さ 20mあまりにも達し,地面をはったり他の植物にからみつく。全体に褐色の毛を密生し,葉は大きな羽状複葉でフジに似ている。花序は葉腋に生じ,紅色の蝶形花を総状にまばらにつける。根はロテノンを含み,「デリス根」として重要な殺虫剤駆虫剤とされた。主成分が熱に弱いため物理的に根を破砕して製する。デリス剤には水和剤,乳剤,粉剤があり,おもに遅効性の接触毒として,アブラムシウリバエなどに対し確実な効果を現す。また家畜の寄生虫の駆除や矢毒としても用いられた。第2次世界大戦までは熱帯地方で大規模に栽培され,日本でも小笠原諸島で栽培されたことがある。

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