翻訳|pyrethrin
ジョチュウギク(シロバナムシヨケギク)の花に含まれる天然殺虫性物質で,原産地である中央アジア,カフカス地方で,19世紀に入りその乾燥花が殺虫剤として用いられ始めた。現在では,アフリカのケニア,タンザニアが主生産国である。ジョチュウギクの殺虫成分はピレスロイドと総称され,ピレトリンⅠ,Ⅱ,シネリンⅠ,Ⅱ,ジャスモリンⅠ,Ⅱの6種からなる。いずれもシクロプロパン環を有する酸と5員環環状ケトンアルコールとのエステル体である。
実用には,除虫菊剤あるいはピレトリン剤(商品名P.G.P.,パイベニカ)として,粉剤,乳剤,エアゾルとして用いられる。ハエ,カなどの衛生害虫に対してすぐれた殺虫力を示し,速効的で飛翔(ひしよう)昆虫に対してノックダウン効果を示すことが特徴的である。ピレトリンの哺乳類に対する急性毒性は,50%致死量LD50=273~796mg/kg(マウス,経口)と低い。殺虫力はピレトリンⅠ,Ⅱがシネリン,ジャスモリンより強く,またノックダウン効果は,ピレトリンⅠがⅡより強力である。また,ピレトリンをモデル化合物とした合成ピレスロイドの開発研究が盛んで,アレスリンやレスメスリンなどが開発された。また最近になって,酸部分をも改変したジフルベンズロン,フェノキシカルブ,ブプロフェジンなどのNRDC系やシクロプロパン環を含まないフェンバレラート,さらにはエステル構造を含まないエトフェンプロックスなどのきわめて強力な殺虫剤が開発され,従来主として衛生害虫の防除に利用されていたピレスロイドも農業用殺虫剤として注目されるようになった。
執筆者:高橋 信孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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