改訂新版 世界大百科事典 「ロンドン株式取引所」の意味・わかりやすい解説
ロンドン株式取引所 (ロンドンかぶしきとりひきじょ)
London Stock Exchange
世界の金融の中心地ロンドンのシティにあるイギリスの代表的な株式取引所。売買高はかつては世界一であったが,20世紀に入ってアメリカ,次いで日本にも抜かれた。上場銘柄数では,現在もニューヨーク以下を大きく引き離して世界一である。上場銘柄の国籍もヨーロッパ諸国,旧植民地を中心として世界30ヵ国以上に及び国際色豊かである。イギリスで証券取引の始まったのは17世紀中ごろから後半にかけてといわれ,東インド会社の持分(株式)あるいは国債が取引されていたようである。証券取引所としては1773年が最初で,1802年に新たに取引所の建物が完成するとともに,今日のロンドン株式取引所が正式に発足した。組織形態は会員制の自治団体方式をとっており,法人格は有しない。1986年のいわゆる〈ビッグバン〉(後述)以前には,会員はすべて個人に限られ,顧客の売買注文を取り次ぐブローカーbrokerと,特定の銘柄につき自己勘定による売買を専門とするジョッバーjobberに分かれ,両者の兼業は禁止されていた。すなわちジョッバーは一般顧客からの売買注文を受けることができず,売買の相手先はブローカーないし他のジョッバーであった。アメリカの自己勘定による売買と仲介を行うスペシャリストspecialist,日本の売買の媒介を専業とする才取(さいとり)会員(取引所会員)と異なるところであった。売買取引の仕法には現金取引,定期取引,オプション取引の3種類がある。最も一般化しているのは2週間ごとに決済される定期取引である。
執筆者:太田 登茂久
ビッグバン
サッチャー政権下の1986年10月,ロンドン株式取引所の大改革が行われたが,これを宇宙のビッグバン(大爆発)になぞらえてこう呼ぶ。証券市場の効率性や流動性を増大させるため,売買手数料の自由化,上記のジョッバー・ブローカー制度の廃止,取引所会員権の外部資本への開放などが行われた結果,資本力のあるマーチャント・バンク(国際金融業者)が証券業務に参入するなど競争が激化し,ロンドン市場が強力な国際金融センターになる基盤ができあがる契機となった。
→株式市場
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報