改訂新版 世界大百科事典 「ニューヨーク株式取引所」の意味・わかりやすい解説
ニューヨーク株式取引所 (ニューヨークかぶしきとりひきじょ)
New York Stock Exchange
アメリカのみならず,世界でも最大の株式取引所。上場されている株式の時価総額はアメリカ全体の約80%を占める。年間売買高もアメリカの10株式取引所(アメリカン,ボストン,シカゴ,シンシナティ,ミッドウェスト,ニューヨーク,パシフィック,フィラデルフィア,インターマウンテン,スポーケン)のなかで80%前後のシェアを有する。金融の中心地ニューヨークのウォール街に位置し,証券市場の中核的機能を果たしている。起源はコーヒーハウスで取引の始まった1791年にさかのぼることができ,1817年に証券ブローカーを会員として現取引所の原型ができ上がった。20世紀にはいり,アメリカ経済が発展するにつれ証券市場も拡大したが,投機の行過ぎなどから1929年には歴史的大暴落を演ずることになった(暗黒の木曜日。〈大恐慌〉の項参照)。パニックに対する反省から証券と銀行の分離が図られ(1933),さらに証券取引委員会(SEC)の設立(1934)をみた。第2次大戦後は,60年代のアメリカ経済の成長を背景とした株式ブーム,75年の手数料自由化に端を発した証券界の再編成などを経ながら今日に至っている。
組織形態は会員制の法人で,会員には,受託売買のコミッション・ブローカー,特定の銘柄を取引するスペシャリスト,立会場内で自己勘定による取引を専門とするレジスタード・トレーダーなどがある。会員は日本と異なり個人である(日本の証券取引所の場合は証券会社に限定)。上場銘柄は同じニューヨークにあるアメリカン取引所(シェア約10%で第2位)と比べて大企業が多く,両者の関係は東証の市場第一部と第二部の関係に似ている。店頭市場が発達していることも特徴の一つである。ディスクロージャー(企業内容開示)面でも世界で最も発達しており,管理の徹底が特徴である。売買取引の方法は日本と同様に普通取引が原則となっている。
→株式市場 →証券取引所
執筆者:太田 登茂久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報