ロンドンのシティのうち、イングランド銀行からグレースチャーチ街に至る300メートルほどの通りの名称。多くの銀行や保険会社などが軒を連ねているため、ロンドン金融市場の代名詞とされている。
その名は、12世紀ごろ、イタリアのロンバルディア出身の商人が移住して金融業に従事していたことに由来する。17~18世紀には国際金融の中心地となり、19世紀なかばには、ロンバード街を中心に、商業銀行、ビル・ブローカー、イングランド銀行などからなる短期金融市場が成立、また19世紀後半には、マーチャント・バンク、金融商会、引受商社などからなる資本市場が成立した。そのようすは、W・バジョットの名著『ロンバード街――ロンドンの金融市場』Lombard Street: a Description of the Money Market(1873)に詳しい。
第一次世界大戦後ニューヨークのウォール街の台頭によって、ロンバード街の国際金融の中心地としての地位はしだいに低下してきてはいるが、いまなお大きな影響力を保持している。
[鈴木芳徳]
『W・M・クラーク著、山中豊国訳『シティと世界経済――ロンドン金融市場の役割』(1975・東洋経済新報社)』▽『W・バジョット著、宇野弘蔵訳『ロンバード街――ロンドンの金融市場』(岩波文庫)』
ロンドンのテムズ川北岸のいわゆるシティに位置し,イングランド銀行から東に走る300mほどの通りの名称であるが,多くの銀行や保険会社が軒を連ねているため,ロンドン金融市場の別名として慣用されている。ロンバード・ストリートともいう。
イギリスでは13世紀末にエドワード1世がユダヤ系金融業者を追放したが,この前後から北イタリア,ロンバルディアLombardia出身の商人たち(ロンバルディア人)が来住し,貿易とからめて両替・為替業を営み,銀行業者の地位を確立した。その後チューダー,スチュアート王朝下にイギリス人も金融業務に進出し,17世紀には金匠やイングランド銀行もこの地で銀行業を開始した。19世紀にはW.バジョットが名著《ロンバード街》(1873)で描写したように,イギリスはこの地域一帯を中心にして古典的金融制度を完成する。それはイングランド銀行を頂点とする単一準備・単一発券のピラミッド組織であり,また手形割引と預金業務を軸とする商業銀行の体系である。こうしてロンバード街はイギリスのみならず世界の金融中心地として君臨し,いまなお大きな影響力を保持してはいるが,第1次大戦後しだいにウォール街にその座をゆずっている。
執筆者:関口 尚志
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ロンドンのシティにある街区。イタリアのロンバルディア地方の人が14世紀に来住して,金貸しなどを行ったことに由来。20世紀前半まで世界金融市場の中心としてその代名詞として使われた。
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…多数の評論を残したが,その主著《イギリス憲政論》(1867)は第1次選挙法改正後の憲政のリアルな描写で有名であり,《自然科学と政治学》(1872)によって政治心理学の草分け的存在ともされる。《ロンバード街Lombard Street》(1873)は,イギリスの金融構造と中央銀行の責任について古典的説明を行っている。全集10巻(1915)がある。…
…その後チューダー,スチュアート王朝下にイギリス人も金融業務に進出し,17世紀には金匠やイングランド銀行もこの地で銀行業を開始した。19世紀にはW.バジョットが名著《ロンバード街》(1873)で描写したように,イギリスはこの地域一帯を中心にして古典的金融制度を完成する。それはイングランド銀行を頂点とする単一準備・単一発券のピラミッド組織であり,また手形割引と預金業務を軸とする商業銀行の体系である。…
…当時ロンドンのタワー街にあったロイドEdward Lloyd(1648ころ‐1713)の経営するコーヒー店は,海運業者や海上保険引受人のたまり場となっていたが,店主のロイドは客の便宜のため,海運に関するニュースを集めたり,船舶の売買や積荷取引の周旋を行ったので,その店は大いに栄えた。1691年ロイド・コーヒー店は,ロンドンの商業金融の中心ロンバード街に移ったが,そのころまでに保険の引受けを専門の職業としていた保険引受人は,みなここを取引の場所にしたので,18世紀半ばころには,ロイズは海上保険の中心市場としての地位を確立した。こうしてロイズはコーヒー店から保険引受人の集団として発展し,1774年には王立取引所Royal Exchangeの建物に事務所を移した。…
※「ロンバード街」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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