アカガエル

改訂新版 世界大百科事典 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル (赤蛙)

アカガエル科Ranidaeカエル総称。一般にはこのうち日本産のニホンアカガエルヤマアカガエルなど体色の赤いカエルを指すことも多い。アカガエル科は日本産のトノサマガエルニホンアカガエルヌマガエルなど典型的なカエルの形態をしたグループで,全世界に約44属,625種が広く分布するが,オーストラリア,南アメリカには種類が少ない。大半が水辺の草むらや森林にすむ地上性。ジャンプ力に優れ,トノサマガエルに見られるように,ひと跳びで水中に逃れられる草むらなどに潜む。後肢の発達したみずかきはジャンプの踏切に役だつとともに,水中では巧みなカエル泳ぎに効力を発揮する。一般に指には吸盤がなく,あっても発達しない。体長10cm以下の種類が多いが,体長が30~40cm(記録(ギネスブック1997年版)では1989年,カメルーンのサナガ川で捕れた個体は36.83cm)に達する世界最大のカエル,アフリカ産ゴライアスガエルConraua goliath(=Gigantorana goliath)(英名goliath frog)も含まれる。これに次いで大型のアフリカウシガエルRana adspersa(=Pyxicephalus adspersus)は地中生活者で,産卵期には雄は沼で卵や幼生を守り,近寄る敵はそれがたとえゾウであってもとびかかるといわれる。あごの力が強く指をかまれると歯で傷つくほど。変り種は西アフリカのカメルーン産ケガエルTrichobatrachus robustusで,繁殖期の雄には胴側部と後肢に血管の通じた毛状突起が多数生ずる。これはおそらく水中で呼吸器官としての機能を果たすものと考えられている。日本産アカガエル類20種のうち最も美しいのは奄美大島・沖縄本島産のイシカワガエルR.ishikawaeで,体長10~13cm,山地の森林中に生息し昼間は横穴に隠れている。体長14cmに達する奄美大島産オットンガエルRanaBabinasubaspera前者より少し小さい沖縄本島産ホルストガエルR.(B.)holstiは2種でバビナ属を構成している。本属の特徴は前肢が5指制なことで,しかも第1指の骨がとげ状をしており自衛の武器となっている。アカガエル類はアジアをはじめ世界の各地食用に供され,日本各地に分布するウシガエルのほか東アジアではトラフガエルR.tigrina(体長12cm)が水雞と称して賞味され,ヨーロッパトノサマガエルR.esculentaは英名そのものがedible frog(食用ガエル)であり,稀種(きしゆ)のゴライアスガエルさえも現地では特別料理の材料となる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル
あかがえる / 赤蛙
brown frog

両生綱無尾目アカガエル科に属するカエルのうち、背面の地色が赤みがかった種の総称。ユーラシアと北アメリカの北部を中心に分布し、世界でもっとも低温に適応したカエルである。北海道のエゾアカガエルRana chensinensis、本州、四国、九州のニホンアカガエルR. japonica、ヤマアカガエルR. ornativentris、タゴガエルR. tagoi、対馬(つしま)のツシマアカガエルR. tsushimensis、チョウセンヤマアカガエルR. dybowskii、琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)のリュウキュウアカガエルR. okinavanaの7種が分布し、中国大陸にはアムールアカガエルR. amurensisその他が分布する。これらは互いに近縁で一群を形成し、人工的に雑種のできる組合せが多い。

 小形のツシマアカガエルで体長約3センチメートル、大形のニホンアカガエルで約6センチメートル、雌はこれよりやや大きい。背側部に2本の隆条があり、淡い背中線および両眼瞼(がんけん)を結ぶ逆三角形の黒斑(こくはん)をもつ種が多い。背面は黄褐色、赤褐色または暗褐色、腹面は白色か淡赤色。繁殖期の雄の前肢親指には顕著な婚姻瘤(こんいんりゅう)が発達する。吸盤はない。山沿いの地域に多くみられ、一般に冬から春にかけて溜池(ためいけ)、水田、溝などの止水に産卵する。多数の卵を含む大形卵塊を産む種が多いが、リュウキュウアカガエルは小形の卵塊をいくつも産む。タゴガエルは山地にある源流の伏流水に産卵し、卵は大きく数は少ない。産卵期以外は陸上で生活し、水辺からかなり離れた場所でみかけることが多い。鳴嚢(めいのう)は発達せず、鳴き声は弱い。

[倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル
brown frog

カエル目アカガエル科 Ranidaeのうちで,赤褐色の体に眼のうしろから鼓膜の後方までを広くおおう黒色斑をもち,背面に短い隆条群がなく,両側には眼の後端にはじまって後肢の基部まで続く完全な隆条をそなえた一群のカエル類をいう。おもに北半球の温帯地方に分布するが,北極圏まで広がっているものもある。日本には6種ほどが知られているが,本土に広くみられるものは,体長 6cmぐらいで頭が細く,おもに平地にすむニホンアカガエル Rana japonica,頭が丸く,顎の下側に黒っぽい斑紋があり,山地にすむヤマアカガエル,体長 4cmぐらいの小型種で顎の下側が全体に黒っぽく,おもに山地にすむタゴガエル R. tagoiなどである。アカガエル類は日本にいるカエルのうちでは最も早く産卵し,場所によっては 12月頃から繁殖期に入る。池や沼などに大きい卵塊を産むものが多いが,タゴガエルは山地の伏流水などに大型の卵を比較的少数個産みつける。

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百科事典マイペディア 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル

アカガエル科に属するカエルの総称。一般にはこのうち赤みがかった体色をもつものを指すこと多い。アカガエル科は日本産のトノサマガエル,ニホンアカガエル,ヌマガエルなど典型的なカエルの形態をしたグループで,全世界に約30属300種が広く分布する。ニホンアカガエルは体長4〜7cmで,本州,四国,九州,国外では中国の南部一帯に分布。水辺に生活し,昆虫,クモなどを捕食する。繁殖期は1月下旬〜3月で500〜3000個ほどの卵を産む。本種に近いタゴガエルは山地の渓流にすみ,伏流水の石に産卵する。他に日本産のものとしてはエゾアカガエル,ヤマアカガエルなど。
→関連項目アベコベガエル

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世界大百科事典(旧版)内のアカガエルの言及

【食用ガエル(食用蛙)】より

…食用にされるカエルの一般名。ショクヨウガエルの別名をもつアメリカ合衆国原産のウシガエルRana catesbeiana(イラスト)をはじめ,カエルは世界各地で食用に供されている。例えば,ヨーロッパトノサマガエルRana esculentaの英名edible frogは食用ガエルを意味し,南アジア産トラフガエルRana tigrinaはもも肉の味から水鶏(ツイコイ)と呼ばれる。アマゾン川流域ではアベコベガエルPseudis paradoxaの全長25cmに達するオタマジャクシまでが,市場で売られている。…

※「アカガエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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