アメリカの代表的ミュージカル・スターの一人。ウィーンからの移住者を父にもち,7歳のときから姉アデルとパートナーを組んでダンスの舞台を踏み,やがてブロードウェーのミュージカルへ進出した。姉の結婚後ハリウッドのスクリーン・テストを受けて,ジョーン・クロフォード主演の《ダンシング・レディ》(1933)でデビュー。戦前は,《空中レビュー時代》(1933)から《トップ・ハット》(1935),《踊らん哉》(1937)を経て,《カッスル夫妻》(1939)に至る9本で一世をふうびしたジンジャー・ロジャーズとのコンビをはじめ,リタ・ヘイワース(《踊る結婚式》1941,《晴れて今宵は》1942),エリノア・パウエル(《踊るニューヨーク》1940)などを相手に,戦後も,ジュディ・ガーランド(《イースター・パレード》1948),シド・シャリッシ(《バンド・ワゴン》1953),レスリー・キャロン(《足ながおじさん》1955),オードリー・ヘプバーン(《パリの恋人》1957)を相手に,多くの〈シング・アンド・ダンス〉映画に出演した。コール・ポーター,ジョージ・ガーシュウィン,アービング・バーリン,ジェローム・カーンらの曲を歌ってヒットさせ,かつ洗練された振付によるダンス・ナンバーを見せた。自分の影と踊る,鏡に映った姿と踊る,靴や帽子掛けなどの物を相手に踊るといった斬新なアイデアや,モダン・バレエをとり入れたナンバーで〈レビュー映画〉の殻を破り,新しい〈ミュージカル映画〉の道を開いた。戦後の〈MGMミュージカル〉をジーン・ケリーとともに担った。晩年も演技者として《渚にて》(1959),《タワーリング・インフェルノ》(1974)などに出演した。自伝《ステップ・イン・タイム》(1959)がある。
執筆者:柏倉 昌美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカのタップ・ダンサー、映画俳優。本名Frederic Austerlitz。ネブラスカ州オマハに生まれる。ブロードウェー・ミュージカルやボードビルのダンサーとして出発、ハリウッドのミュージカル映画に出演し、軽妙さ、ウイットのある演技で人気を得た。ジンジャー・ロジャーズ(1911―1995)と組んで『トップ・ハット』(1935)などに出演したほか、ジュディ・ガーランドと『イースター・パレード』(1948)、シド・チャリシー(1922―2008)と『バンド・ワゴン』(1953)、レスリー・キャロン(1931― )と『足ながおじさん』(1955)で共演。1959年の『渚(なぎさ)にて』以後はシリアスな映画にも出演して新生面を開いた。
[市川 雅]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…おもにボードビル,レビュー,ミュージカルの舞台で踊られ,1920年代から30年代に大いに流行した。黒人のビル・ロビンソンBill Robinson(1878‐1949)とフレッド・アステアの踊りが最も有名で,とくにアステアはジンジャー・ロジャーズGinger Rogers(1911‐95)と組んだ多くの名作映画で日本にも紹介された。アステアのダンス・ナンバーを中心にしたミュージカル映画では,《カッスル夫妻》(1939)が最も著名である。…
… そしてワーナー・ブラザースでバスビー・バークリー(バークレイ)の振付による《四十二番街》(1934)が,奔放なカメラワークによって音楽と視覚的イメージを華麗に結びつけ,〈フィルム・レビュー〉とか〈シネ・オペレッタ〉と呼ばれるものとは一線を画する新しいスタイルをつくりあげ,続いて〈ジャズ・ビート〉を持ち込んでタップ・ダンスを踊りの基礎にした《ゴールド・ディガース》(1933),《フットライト・パレード》(1933)によってバークリーならではの特色を示した。一方,RKOのフレッド・アステアとジンジャー・ロジャーズGinger Rogers(1911‐95)のコンビが,《空中レヴュー時代》(1933)でデビューし,《コンチネンタル》(1934),《トップ・ハット》(1935),《有頂天時代》(1936),《踊らん哉》(1937)等々でジョージ・ガーシュウィン,コール・ポーター,ジェローム・カーン,アービング・バーリンの音楽に乗った〈キャリオカ〉と呼ばれる踊りとともに人気を博した。踊子たちの群舞を大俯瞰で万華鏡のような華麗なイメージで見せたバークリーの振付と,それとは逆に,〈トリック〉によらず踊る人間の生の姿そのものを見せるアステアの振付と踊りが,30年代から40年代にかけてのハリウッド・ミュージカルの二つの基本的なスタイルを象徴するものであった。…
※「アステア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新