ドイツの染料化学者。ロシアのペテルブルグに生まれる。同地で教育を受けたのち、チューリヒ工科大学でウィスリツェヌスやコップに化学を学び、1875年、ロンドン近郊の染料会社に勤め、ここでアゾ色素クリソイディンなどを発見、1882年にはドイツのマンハイムの染料会社に転じ、アゾ色素の中間体を発見した。1891年ベルリン工科大学教授(化学技術学)となった。またインドフェノールの研究が有名である。彼は1876年に、染料物質のどのような分子構造が発色に関係あるかに関する学説を提出した。すなわち、色素にはその色を発する原子団があると考え、それを発色団chromophorとよんだ。また、発色団を含む分子(色原体)が染料となるためにはヒドロキシ基-OHやアミノ基-NH2という原子団が必要なので、これを助色団auxochromとよんだ。この学説は、その後の新しい染料の合成に有力な指針を与えた。
[都築洋次郎]
ドイツの天文学者。ベルリンのウラニヤ天文台員で、1898年8月、小惑星エロスを発見した。当時、写真観測により、光度11等、視運動1日に約0.5度角で逆行中のエロスを検出、それを追跡した結果、その軌道が火星軌道の内側に入り込む特異小惑星であり、地球には約6分の1天文単位まで接近することが判明した。この機会をとらえて地心視差を測定し、1天文単位のキロメートル基準値を決定する手段を基礎づけたが、この方法によって火星の衝による方法より精度は高まった。
[島村福太郎]
機知、頓知(とんち)、才知。ウイットとは本来知力のことだったが、イギリスにおいて17世紀ごろから、当意即妙な発想を意味するようになった。とりわけダンの詩には鋭い奇想が随所にみられ、それがウイットの典型となった。18世紀には理性と想像力をともにしたきわめて都会的、文明的でしゃれた発想のことをいうようになり、アディソンのエッセイ、ロチェスター伯の詩などにその優れた例をみるが、ややもすればポープの詩やスウィフトの散文にみられるように、辛辣(しんらつ)さを加えて風刺に流れる傾向が生じた。コールリッジによれば、ユーモアは本質的におかしさにかかわるが、ウイットは驚きを伴い、非個性的な知性より生じるものであるという。
[船戸英夫]
語源的には〈認識する力〉〈知性〉を意味するが,やがて機知,機転などをさすようになった。それは17~18世紀ヨーロッパの文学が主知的傾向を強め,しかも宮廷や社交界で知的洗練をきそう風潮が高まった結果である。思いがけない気のきいた言いまわしでぴたりと表現してみせる才気の文学が,〈ウィット〉の文学としてもてはやされた。しかし19世紀のロマン主義時代には,その種の理知的な傾向は嫌われ,〈ウィット〉は文学上の美徳の地位を失うことになる。それがあらためて脚光をあびるのは,20世紀の反ロマン主義,すなわち新しい主知主義の結果である。〈ウィット〉はたんに表現技術の問題ではなく,概念把握の深く鋭い形態として称揚されるようになった。バレリーやT.S.エリオットはこの新しい〈ウィット〉の文学を代表しているし,この新しい視点から17世紀文学の〈ウィット〉の再評価もおこなわれた。
執筆者:川崎 寿彦
ドイツの工業化学者。ペテルブルグに生まれ,ロシアで教育を受ける。チューリヒのポリテクニクを卒業後,1873年フルカン製鉄所の分析技術者となる。74年ハルトのプリント工場に勤めて,染料に関心をもつようになった。75年,ロンドン近くのウィリアムズ・トマス・アンド・ダウアー商会の染料工場で研究した後,79年帰国して,マンハイムの化学会社に勤めた。86年ベルリン工科大学で学位を取り,91年教授となる。多くの染料研究の中で,色が発色団の存在または原子の配列に関係していることを明らかにしたウィットの法則の発見(1876),アゾ染料トロペオリンの合成(1879)が特筆される。
執筆者:徳元 琴代
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…つまり風習喜劇とは,内容においても支持層においても,田舎よりも都会の,また庶民やブルジョアよりも貴族の劇だったのである。最も重視された価値基準は,ものごとを知的かつ批判的にとらえる能力としての機知witである。登場人物は大別すると機知を備えた者,機知を備えてはいないのに備えているつもりでいる者,機知とまったく無縁である者,の三つの型に属し,第1の型が第2および第3の型を見下して笑うというかたちで喜劇が成立する。…
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