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アデノウイルス adeno virus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アデノウイルス
adeno virus

人間や動物に広く蔓延しているアデノウイルス科のウイルス。直径 70~80nmの球形 (正確には正 20面体) のウイルスで,DNAを含んでいる。人間のアデノイド組織から分離されたもので現在,ヒトアデノウイルスは血清学的には 41の型に分けられている。主として呼吸器,目,消化器などの粘膜やリンパ組織を侵す。8型 (ときに 19型,37型) は流行性角結膜炎,3,7,11型などは咽頭結膜熱 (プール熱) の病原体としてよく知られている。その他,肺炎,胃腸炎,腎炎,肝炎,発疹などさまざまな臨床像を示すが,患部からウイルスが分離できれば診断は容易である。ウイルスに対して確実にきく薬はない。

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百科事典マイペディアの解説

アデノウイルス

1953年アデノイドの組織培養から初めて分離された径約70nmの正二十面体の構造をもつウイルス。現在,血清学的に90以上の型に分けられ,ヒトに感染するものだけで41型ある。
→関連項目咽頭結膜熱流行性角結膜炎

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栄養・生化学辞典の解説

アデノウイルス

 動物を宿主とするウイルスの一つ.眼や呼吸器の炎症の原因となることがある.

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世界大百科事典 第2版の解説

アデノウイルス【adenovirus】

1953年,ロウW.P.Rowe,ヒューブナーR.J.Huebnerらがヒトの扁桃とアデノイドから分離したウイルス。はじめはAPCウイルスadenoidal‐pharyngeal‐conjunctival virusといわれたが,56年にアデノウイルスと命名された。直径70nmの正二十面体の構造をもち,頂点から外側に向かってファイバーが突き出ている。分子量2~3×107の2本鎖のDNAと14種類のタンパク質から構成されている。

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大辞林 第三版の解説

アデノウイルス【adenovirus】

人のアデノイドから分離された DNA ウイルス。咽頭結膜熱(プール熱)・流行性角結膜炎・肺炎などを起こす。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アデノウイルス
あでのういるす
adenovirus

アデノウイルス科に属するウイルスの総称。「Adeno-」は腺(せん)glandを意味する。1953年にロウエWallace P. Roweによって発見、1955年命名された。ヒトの上気道炎、角結膜炎、膀胱(ぼうこう)炎、咽頭(いんとう)炎などの感染症をおこす。現在49の血清型が知られている。共通抗原の特異性によって二つのグループに分類する。哺乳(ほにゅう)類由来のマストアデノウイルスgenus Mastadenovirus属と鳥類由来のアビアデノウイルスgenus Aviadenovirus属である。
 アデノウイルスはエンベロープ(外被)をもたない2本鎖DNA(デオキシリボ核酸)ウイルスで、ウイルス粒子は252個のカプソメア(カプシドの構造単位)に囲まれ、直径80~110ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の正二十面体の構造をもつ。カプソメアは240個のヘキソンhexonと正二十面体の頂点を占める12個のペントンpentonから構成されている。
 ペントンは基部のペントンベースとペントンファイバーからできている。ゲノムは2本鎖DNA線状である。
 感染の際にはペントンファイバーで細胞に吸着する。ファイバーは抗原γ(ガンマ)、またはヘキソン抗原ε(イプシロン)により、特異的中和抗体を誘導する。ペントンベース(β(ベータ))とファイバー(γ)は抗原決定基であり、ウイルスのそれぞれにとって特異的である。ペントンベースが赤血球に吸着することによって血液の凝集がおこる。
 エーテルなどの有機溶媒に耐性があり、水素イオン濃度指数(pH)3~9では安定で不活性化しにくい。胃酸、胆汁(たんじゅう)酸、膵(すい)液の消化器系酵素に抵抗し、増殖する。熱に対して不安定で60℃、20~30分の加熱で不活性化する。ラウリン酸ナトリウム(SDS)、ホルマリン、紫外線、塩素剤によって不活性化される。しかし、ほかのウイルスより薬剤に対して抵抗性が強力で病院感染には要注意のウイルスである。
 ヒトなど宿主(しゅくしゅ)(ウイルスの寄生対象となる生物)細胞に侵入したウイルスは宿主の細胞の核内で成熟し増生(増殖)する。このあと複雑な経緯で増生したウイルス粒子が細胞外に放出するが、mRNA(メッセンジャーリボ核酸、メッセンジャーRNA)が大きな役割を担っている。
 増生はまず、宿主細胞への吸着から始まる。これは宿主細胞のエンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込むプロセスの一つ)による。侵入初期のmRNAは細胞質で初期タンパク質に翻訳され、ウイルスDNAの合成に必要な酵素やT抗原などが合成され、その結果ゲノムDNAが形成される。この場合必要なのはヌクレオチドではなく、タンパク質なのである。複製されたウイルスDNAはその一部の働きによってmRNAが転写によってつくられる。このmRNAが次世代ウイルス粒子の構成タンパク質をつくる。形成されたDNAとタンパク質は宿主の核内で集合し、次世代のウイルス粒子となる。このあとウイルス粒子は細胞崩壊により細胞外に放出される。この経過は細胞レベルにおけるDNAウイルスの感染や病原性発現と伝播(でんぱ)機構のプロセスとみることができる。
 アデノウイルスの感染症は特定の血清型ウイルスによって、固有の感染症をおこす。感染は飛沫(ひまつ)または接触により、上気道や目の粘膜細胞に感染し、増生する。その一部は食道を通って小腸に達し、粘膜細胞で増生する。糞便(ふんべん)中にも排泄(はいせつ)されるが、周辺のリンパ節に侵入し増生するためリンパ節腫脹(しゅちょう)をおこす。感染は広範に広がることはなく、ウイルス血症をおこすことはない。急性感染症となる場合が多いが、通常の潜伏期は5~6月、不顕性感染が多い。以下アデノウイルス感染症を概説する。
(1)急性熱性咽頭炎〔起因血清型1、2、5(3、4、6、7)〕 冬期、乳幼児に散発。かぜ症候群を示す。咽頭の発赤(ほっせき)と頸部(けいぶ)リンパ節の腫脹があり、腸重積を続発することもある。
(2)咽頭結膜熱〔起因血清型3、7(1、2、4、5、6、14)〕 夏期、プールの水を介して伝播し、学童や幼児に集団発生する。プール熱とよばれる。
(3)流行性角結膜炎〔起因血清型8、11(3、7、19、37)〕 粉塵(ふんじん)による角膜や結膜のこすり傷が誘引となる。伝染性が強く、重症となることがある。医療感染により広がる場合がある。
(4)乳児急性胃腸炎〔起因血清型40、41〕 2歳以下の乳幼児に年間を通じて発症。かぜ症状のあと腹痛、嘔吐(おうと)、下痢をおこす。
(5)急性出血性膀胱(ぼうこう)炎〔起因血清型11、21〕 学童期の男児に、かぜ様症状に続き血尿や頻尿をきたす。経過は数日で症状はなくなり、予後は良好である。
(6)急性上気道疾患〔起因血清型3、4、7(11、14、21)〕 冬期、乳幼児に多発。発熱、悪感、咽頭炎、頸部リンパ節炎、乾性の咳(せき)を主症状とする。アメリカで新兵訓練キャンプで集団発生したことがあり、「新兵熱」とよばれる。
(7)アデノウイルス肺炎〔起因血清型3、4、7(1、2、18)〕 冬期、乳幼児に散発。肺のX線所見で無気肺陰影がみられる。症状は発熱、咳、胸痛などのかぜ症状である。
(8)急性濾胞(ろほう)性結膜炎〔起因血清型3、7、14(1、2、5、6、9、10)〕 成人に散発。かぜ症状に伴い結膜充血、濾胞の肥大、漿液(しょうえき)分泌物の増加が主症状。
(9)小児腸重積症〔起因血清型1、2、5、6(3、4、7)〕 乳幼児に散発。かぜ様症状に続いて、突然腹痛を伴い重積症がおこる。腸管膜リンパ節の腫脹がみられる。高圧浣腸(かんちょう)により対症療法的修復を行う。
 このほかに、子宮頸部炎をおこすアデノウイルス(37型)、髄膜脳炎、心筋炎、発疹などをおこすもの(7、34、35型)、小児腸重積症と同じ血清型のアデノウイルスで急性呼吸器感染症、咽頭結膜熱、胃腸炎が激しく認められるものまで発見されている。アデノウイルスによる疾患に合併症がある場合は重症化し、死亡率が高い。
 アデノウイルス感染症は特別の例(新兵熱)では生(なま)ワクチンが使用されることはあるが、特異的な治療法がなく、対症療法がおもなものとなっている。[曽根田正己]

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世界大百科事典内のアデノウイルスの言及

【癌】より

… 60年代にエディB.Eddyらは,サルに見いだされたSU40という,サルでは非腫瘍原性のDNA型ウイルスを,新生仔ハムスターに接種すると肉腫を生じることを発見した。またトレンティンJ.Trentinと矢部芳郎は,ヒトのアデノウイルスを新生仔ハムスターに接種すると肉腫をつくることを見いだした。これらの発見は,他種動物のウイルスの感染でヒトに癌が発生する可能性と,ヒトにふつうに常在するアデノウイルスが癌の原因となる可能性を示した点で,非常にショッキングなものであったが,現在はそれらの可能性はほぼ否定されている。…

※「アデノウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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