エンドサイトーシス(その他表記)endocytosis

翻訳|endocytosis

デジタル大辞泉 「エンドサイトーシス」の意味・読み・例文・類語

エンドサイトーシス(endocytosis)

細胞外部物質を取り込む過程の一つ。細胞の表面で、細胞膜の一部が物質を包み込むようにして陥没し、細胞膜から遊離して小胞を形成する。バクテリアなどの大きな粒子を取り込む食作用ファゴサイトーシス)と、溶液を取り込む飲作用ピノサイトーシス)に大別される。飲食作用。→エキソサイトーシス

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改訂新版 世界大百科事典 「エンドサイトーシス」の意味・わかりやすい解説

エンドサイトーシス
endocytosis

エンドサイトーシスとは細胞が液を飲んだり,餌を食べたりして外界から物質を取り込む作用の総称である。かつては液を飲むことを飲作用pinocytosis,食べることを食作用phagocytosisと呼び分けてきたが,現在では両者共通の機能・機構をもつことから考えて同じ名称がのぞましいということになっている。ここでは便宜上,両者を区別して説明する。

細胞の表面から膜が細い管状に細胞内に落ち込んで,その管の先がくびれることによって細胞内に外液を取り込む現象。アメーバで,この現象が起こっているのが発見されたのは20世紀に入ってからであるが,組織培養中の繊維芽細胞などもこれを行っている。管の太さは2μ前後で,光学顕微鏡レベルの構造であるが,位相差顕微鏡微分干渉顕微鏡の発達によって作用の詳細が明らかになった。細胞膜を通ることができない巨大タンパク質分子や,バクテリアなどの細胞内への取込みもこの方法で行われているし,小腸上皮細胞も盛んにこれを行って栄養吸収に重要な役割をはたしている。飲作用を細胞に行わせる誘導物質は,色素アルブミンなどのタンパク質や食塩などの無機塩類などであるが,それより先のしくみについては明らかになっていない。

細胞が固形物を取り込む現象。アメーバが餌である繊毛虫テトラヒメナやゾウリムシ,鞭毛虫キロモナスなどを食べるとき,仮足を二またに大きく突き出し包み込むようにして体内に入れ,結果としていわゆる食胞を新しく作る。この食胞は後にリソソームというタンパク質分解酵素を含んだ細胞質中に散在する袋と融合して餌を分解・消化してしまう。仮足で餌を包み込むとき,仮足内で透明に見える細胞質は,単なるゾル状物質ではなく内部に繊維構造がつぎつぎと作られていることが電子顕微鏡像から明らかになった。食作用はアメーバでは必ず体の前半部で起こり,体の後半部では起こらない。このことは前半部が機械的・光刺激に対して内肉質の流動を止める反応を示すのに対し,後半部が反応を示さないのと関連している。仮足を二つに広げて餌を包み込む動きは,餌から分泌される物質の濃度勾配によって引き起こされるのではないかと推定されているが詳しいことはまだわかっていない。アメーバが生きるために餌を食べるのは当然であるが,われわれの体中に無数に散在している白血球の一部(マクロファージなど)もバクテリアや細胞の断片などを食べている。この運動は固形物を取り入れるという点で食作用とみなされてきたが,アメーバのように仮足を出して包み込むのではなく細胞表面にへばりつけて管状にして取り入れる点では飲作用ともいえる。

 このように飲作用と食作用は明確な区別がつけがたいうえ,近年両者に共通のしくみがあることが生化学的研究から明らかになったため,液を飲むか固形物を食べるかで区別することをやめ,両者をエンドサイトーシスと統一して呼ぶことになった。
食細胞
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「エンドサイトーシス」の解説

エンドサイトーシス

 細胞が形質膜で外部の物質を取り込んで陥入し,小胞を形成して細胞内へ取り込む作用.物質が水溶液の場合を飲作用(ピノサイトーシス),固形物の場合を食作用(ファゴサイトーシス)といい,これらの総称.

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世界大百科事典(旧版)内のエンドサイトーシスの言及

【細胞】より

…代謝系の酵素群は一様な分布をせず,効率のよい分業と流れ作業の工程ができ上がっている。このような膜系の構造と機能は,エクソサイトーシスexocytosis(細胞外への物質の放出)やエンドサイトーシスendocytosis(細胞内への物質の取り込み)の場合によく調べられており,GERL系(ゴルジ体Golgi apparatus→小胞体endoplasmic reticulum→リソソームlysosome)によってよく表されている。GERL系の各部分,粗面小胞体膜と滑面小胞体膜,ゴルジ体の膜系と小胞,食作用にともなうリソソームと食胞,分泌過程における分泌顆粒(かりゆう)と細胞膜の融合など一連のダイナミックな膜流動を行い,絶えず膜系の新生と再生をともなっている。…

【細胞】より

…代謝系の酵素群は一様な分布をせず,効率のよい分業と流れ作業の工程ができ上がっている。このような膜系の構造と機能は,エクソサイトーシスexocytosis(細胞外への物質の放出)やエンドサイトーシスendocytosis(細胞内への物質の取り込み)の場合によく調べられており,GERL系(ゴルジ体Golgi apparatus→小胞体endoplasmic reticulum→リソソームlysosome)によってよく表されている。GERL系の各部分,粗面小胞体膜と滑面小胞体膜,ゴルジ体の膜系と小胞,食作用にともなうリソソームと食胞,分泌過程における分泌顆粒(かりゆう)と細胞膜の融合など一連のダイナミックな膜流動を行い,絶えず膜系の新生と再生をともなっている。…

※「エンドサイトーシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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