アナクシマンドロス(読み)あなくしまんどろす(英語表記)Anaximandros

精選版 日本国語大辞典 「アナクシマンドロス」の意味・読み・例文・類語

アナクシマンドロス

(Anaksimandros) 古代ギリシアイオニア学派哲学者万物アルケー(始源、原理)は不死不滅で永遠に自己運動するアペイロン(無限なもの)であると考えた。(前六一〇頃━前五四六

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デジタル大辞泉 「アナクシマンドロス」の意味・読み・例文・類語

アナクシマンドロス(Anaximandros)

[前610ころ~前547ころ]古代ギリシャの哲学者。万物の根源は不生不滅で永遠に運動するアペイロン(無限なるもの)であり、このアペイロンから無数の世界が生成すると説いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナクシマンドロス」の意味・わかりやすい解説

アナクシマンドロス
あなくしまんどろす
Anaximandros
(前610ころ―前547ころ)

古代ギリシアの哲学者。小アジアのイオニア地方の町ミレトスに生まれる。タレス後継者とされ、『ペリ・フュセオース』(自然について)という著作があったと伝えられるが、残っているのはわずかな断片だけである。万物のもとのもの(アルケー)は無限定なもの(ト・アペイロン)であり、この神的で不滅なアペイロンから、まず暖かいものと冷たいもの、乾いたものと湿ったもの、といった性質の対立するものが分かれ、そして、争い合うこの対立するものから地水火風が生じ、さらに星辰(せいしん)や生物が生じるが、これらは掟(おきて)に従い、やがて争いの罪をあがなって死滅し、アペイロンへ戻るというのが、その教えである。また、大地は円筒状であって世界の中央に位置しているとか、人間は初めは魚に似ていたとか説くとともに、日時計を発明したりしたとも伝えられる。

鈴木幹也

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナクシマンドロス」の意味・わかりやすい解説

アナクシマンドロス
Anaximandros

[生]前610頃.ミレトス
[没]前547/前546
ミレトス学派のギリシアの哲学者。タレス弟子アルケ archē (原理) という用語を哲学に導入した最初の人で,archēを無限のもの to apeiron (→ト・アペイロン ) ,永遠のもの,無規定のもの to aoristonであり,一切の有限者の規定性の根底にあると定義した。この一元論の原理としての archēが,タレスの水やアナクシメネスの空気のような特定の元素ではない無限定の物質を意味するところから,合理的神学の最初の萌芽がみられるともいわれる。

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百科事典マイペディア 「アナクシマンドロス」の意味・わかりやすい解説

アナクシマンドロス

古代ギリシア,ミレトス学派の哲学者。タレスの弟子で後継者。天文学者としても著名。万物の根元(アルケー)をト・アペイロン(無限者)とし,この運動から万象が生成すると説いた。神話的宇宙論から合理的・自然学的宇宙論への転換期にいる思想家。
→関連項目アナクシメネス古地図ミレトス

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世界大百科事典 第2版 「アナクシマンドロス」の意味・わかりやすい解説

アナクシマンドロス【Anaximandros】

前610ころ‐前546ころ
古代ギリシア,ミレトス学派の哲学者。タレスの弟子。天文学の研究でも有名で,天球儀を作ったと言われている。彼の哲学について古人は次のように伝えている。〈アナクシマンドロスは存在するもののもとのもの(アルケーarchē),つまり要素を“ト・アペイロンto apeiron”と呼んだ。そしてそのもとのものは水でもなければ,普通に要素と呼ばれているいかなるものでもなくて,ある無規定的なる,無限なるものであり,そのものから全天界と天界の内における世界が生じると言っている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アナクシマンドロス」の解説

アナクシマンドロス
Anaximandros

前610頃~前547頃

ミレトスの生まれで,イオニアの自然哲学者。特定のものとして規定できないもの,つまり「無限者」と呼ばれるものを基本的物質とし,一切はそれから生じ,それへと滅していくとした。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アナクシマンドロス」の解説

アナクシマンドロス
Anaximandros

前611ごろ〜前546ごろ
古代ギリシアのイオニア学派の哲学者
万物の根元を,有限で変化するすべてのものの根底にあって,それ自身は「限界のないもの(ト−アペイロン)」であるとした。

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世界大百科事典内のアナクシマンドロスの言及

【イオニア学派】より

…この呼称は,ピタゴラスを祖とするイタリア学派の呼称とともに,ペリパトス学派の伝統のなかで形成された分類法に基づくものである。この派に入るものとして,この地のミレトス市を中心に活動したタレス,アナクシマンドロス,アナクシメネスらのミレトス学派の哲学者がいる。この派は唯一つの原初的物質(アルケー)を想定し,これから世界が形成されるとしたが,これは真実在についての体系的説明としての哲学にとって,重要な一歩を踏み出すものであった。…

【ギリシア科学】より

…それまでの伝統的な〈神々の生成の物語(テオゴニア)〉はここに現実的な〈宇宙生成論(コスモゴニア)〉へと転換された。ついでアナクシマンドロスは,アルケーはすでに限定をもっている〈水〉ではなく,それ以前の〈無限定なもの(ト・アペイロン)〉であるとし,これから乾―湿,温―冷の対立物が分離し,さらに地,水,空気,火の四大元素が形成され,それによってどのように宇宙や天体がつくられるかを具体的,合理的に論究した。さらにアナクシメネスは無限な〈空気〉をアルケーとし,これが〈濃厚化〉したり〈希薄化〉することによって万物が生ずると考え,はじめて生成変化の起こるしかたを示した。…

【進化論】より

…しかしダーウィン以前のうち,古代ギリシアの自然哲学における進化思想は時代的にもかけ離れており,近代の進化論とは区別して扱われねばならない。
【ギリシア自然哲学】
 ミレトス学派のアナクシマンドロスは,大地の泥の中に原始生物が生じてしだいに発達し,さまざまの動植物ができ,最後に人間があらわれたと説いた。エンペドクレスは,動物の体のいろいろな部分が地中から生じて地上をさまよいながら結合し,適当な結合となったものが生存して子孫を残したとのべた。…

※「アナクシマンドロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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