古代ギリシアの哲学者。小アジアのイオニア地方の町ミレトスに生まれる。アナクシマンドロスの後継者とされるが、著作は失われ、わずかな断片を残すのみである。万物のもとのもの(アルケー)は神的な空気で、この空気が希薄になると暖かい火が生じ、濃厚になると冷たい水や土や石などが生じるが、この希薄化と濃厚化を通じて生じたあらゆるものは、ふたたび空気へ返るというのが、その教えの根本である。この空気はまた生命の原理でもあり、したがって人間の魂も空気であって、「空気であるわれわれの魂がわれわれを統率しているように、気息(プネウマ)すなわち空気が世界全体を取り巻いている」と説くとともに、大地は平板状であって空気の上に乗っているとか、天体は大地から立ち上る蒸気が希薄となり火となってできあがったものであるとか説いたと伝えられる。
[鈴木幹也]
前546年ころ活動の最盛期を迎えた古代ギリシアの哲学者。生没年不詳。ミレトスの出身で,アナクシマンドロスの弟子。その著作の一つの断片には〈空気たるわれわれの魂がわれわれを支配維持するがごとく,コスモス全体を包括するのは気息,すなわち空気なり〉と書かれている。彼はアナクシマンドロスの〈ト・アペイロン〉を〈空気(アエルaēr)〉であると理解し,空気という元素的なもの一つで万物の成立を説明できると考えた。すなわち空気の濃厚化と希薄化の作用によって,例えば雲や水,土や石などの異なったものができるとしたのである。この考えは,はなはだ物理的なものに思われる。ただし,上の断片からもうかがえるように,彼の言う空気は生命のもとであり,その意味では彼はやはり,いわゆる物活論的立場に立っていると言うことができる。
執筆者:斎藤 忍随
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前580頃~?
ミレトスの生まれで,イオニアの自然哲学者。水や「無限者」ではなく,空気を基本的物質として立て,万物はその濃厚化,希薄化によって生ずるという一種の機械論的説明を与えた。
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…この呼称は,ピタゴラスを祖とするイタリア学派の呼称とともに,ペリパトス学派の伝統のなかで形成された分類法に基づくものである。この派に入るものとして,この地のミレトス市を中心に活動したタレス,アナクシマンドロス,アナクシメネスらのミレトス学派の哲学者がいる。この派は唯一つの原初的物質(アルケー)を想定し,これから世界が形成されるとしたが,これは真実在についての体系的説明としての哲学にとって,重要な一歩を踏み出すものであった。…
…ついでアナクシマンドロスは,アルケーはすでに限定をもっている〈水〉ではなく,それ以前の〈無限定なもの(ト・アペイロン)〉であるとし,これから乾―湿,温―冷の対立物が分離し,さらに地,水,空気,火の四大元素が形成され,それによってどのように宇宙や天体がつくられるかを具体的,合理的に論究した。さらにアナクシメネスは無限な〈空気〉をアルケーとし,これが〈濃厚化〉したり〈希薄化〉することによって万物が生ずると考え,はじめて生成変化の起こるしかたを示した。このミレトスの生成の自然学は,〈火〉をアルケーとして〈万物流転〉を説いたエフェソスのヘラクレイトスにより一般化され,すべてのものは〈上り道〉(地→水→空気→火)と〈下り道〉(上と反対の変化)の過程にあるとされた。…
※「アナクシメネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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