あやご

改訂新版 世界大百科事典 「あやご」の意味・わかりやすい解説

あやご

沖縄の宮古島や八重山列島の歌謡名,または沖縄芝居でできた群舞名。歌謡としては,宮古島の場合古くは〈アヤゴ〉,一般に〈アーグ〉と呼ばれ《ピャーシ》《フサ》《ニーリ》など神歌以外の歌の総称として用いられる。現世的英雄をたたえる史歌的性格の強いもの,作物の豊穣祈願と予祝,航海安全祈願,機織等民衆生活の場をうたったものが多い。八重山列島では〈アユ〉〈アユウ〉とも呼ばれ農耕祭儀や航海安全,新築祝などの祝儀の場でうたわれる。踊りとしては,沖縄の著名な舞踊家であり芝居役者であった玉城盛重(たまぐすくせいじゆう)が,1897年ころ仲毛(なかもう)芝居で沖縄の田舎の若者の習俗である毛(もう)(野)遊びを宮古民謡の《クイチャーアーグ》の曲にのせて芝居のフィナーレ用の踊りとして振りつけたもの。三味線の手事(てごと)に合わせて大勢の男女がおのおの1列になり舞台の下手から上手に向かって〈スリッ,スリッ〉のはやしことばと道行の動作で出て来た後,4列になったり,円形になったりしてにぎやかに踊る。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「あやご」の意味・わかりやすい解説

アヤゴ
あやご

沖縄県宮古列島における歌謡の総称。方言ではアヤグ、アーグと発音する。その文章語表記。「綾言(あやごと)」の意というが、未詳。伝統的なアヤゴは、対句形式を基調にした詞章で、大別して、節一つで歌意を完結させる詠嘆的な短詩形式と、節を重ねて叙述を展開させる長詩形式とがある。前者は叙情的な小歌(こうた)で、即興的に謡われることも多い。同じ小歌でも、琉歌(りゅうか)が対句を用いないのと対照的である。

 アヤゴの特色は、後者のような神伝、史伝、世間話などを詠み込んだ叙述的な詞章が発達していることにある。珍しい様式の詩で、今日なお、現代の事件、感懐を歌い上げる力を失っていない。宮古列島では説話をユガタリ(「世語り」か)と総称し、神話、伝説、昔話、世間話などが豊富に語られているが、叙述的なアヤゴは、ユガタリと表裏をなしている場合もある。古く『宮古島旧記』(1727)に9首の叙述的アヤゴがみえるが、これも史伝の本文に添えて記されている。八重山(やえやま)列島の古記録(1705)にも、叙述的な長詩形式のアヤゴがある。この種の歌謡をアヤゴと称したのが古意かもしれない。

[小島瓔

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