アルカリ融解(読み)あるかりゆうかい(その他表記)alkali fusion

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルカリ融解」の意味・わかりやすい解説

アルカリ融解
あるかりゆうかい
alkali fusion

固体の水酸化アルカリを熱して融解させ、その中で水に難溶性の種々の物質を反応させて水溶性の物質にすることなどをいう。無機化合物では、酸に溶けにくい金属酸化物硫化物ケイ酸塩などを分解するのにこの方法がよく用いられる。たとえば、水酸化ナトリウム(融点328℃)と試料とをよく混ぜ、500℃程度で1時間加熱すると、多くの場合、可溶性の物質とすることができる。これらの操作には酸化剤を加えることもあり、また容器としては鉄、ニッケル、金、銀などの高温でもアルカリにおかされないものを使う。有機化合物では少量の水が含まれることが多く、普通200~350℃で反応させるが、たとえば、脂肪酸ではもとの酸よりも炭素が2原子少ない酸と酢酸とに分解し、芳香族ハロゲン置換体、スルホン酸などはフェノールとなる。工業的には染料の製造などに広く用いられる。

[中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「アルカリ融解」の意味・わかりやすい解説

アルカリ融解 (アルカリゆうかい)
alkali fusion

(1)200~350℃で溶融した水酸化アルカリ中で有機化合物に化学変化を起こさせる操作。アルカリ溶融ともいう。脂肪酸をアルカリ融解すると,炭素数が2原子少ない酸および酢酸CH3COOHに分解する。芳香族スルホン酸を水酸化ナトリウムでアルカリ融解すると,下記の式に従ってスルホン酸が分解してフェノール類のナトリウム塩が生成する。

 RSO3H+3NaOH─→RONa+Na2SO3+2H2O

この反応はフェノールのほか,染料合成の重要中間体となるβ-ナフトールなどの工業的製造にも使われているが,実験室で使われることはほとんどない。

(2)固体の水酸化アルカリまたは炭酸アルカリを溶融した中で無機化合物を分解する操作。酸に溶けにくい金属酸化物,硫化物,ケイ酸塩などを,固体の水酸化ナトリウムとともに500℃に加熱して,溶媒に溶けやすい化合物に変化させるために行う。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルカリ融解」の意味・わかりやすい解説

アルカリ融解
アルカリゆうかい
alkali fusion

(1) ケイ酸塩,鉄,マンガン,マグネシウム鉱,硫酸塩,錫石,カーボランダムなどの天然試料あるいは化合物は,固体の水酸化アルカリ,炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどと加熱すると融解し分解される。この操作をアルカリ融解またはアルカリ溶融といい,酸で分解できない試料の分解に広く使われる。融成物は水または酸で処理され,分析操作に供される。炭酸ナトリウムと酸化剤を併用するアルカリ性酸化融解,炭酸ナトリウムと還元剤を併用するアルカリ性還元融解もよく用いられる。
(2) 有機化合物を固体の水酸化アルカリとともに加熱,融解して変化させる操作。芳香族スルホン酸塩,ハロゲン置換体はフェノールとなり,脂肪酸はもとの酸より炭素原子数が2個少い酸と酢酸に分解される。

C6H5SO3Na+NaOH→C6H5OH+Na2SO3

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化学辞典 第2版 「アルカリ融解」の解説

アルカリ融解
アルカリユウカイ
alkali fusion

】濃い水酸化アルカリ水溶液を用い,200~350 ℃ の高温で有機化合物を反応させる方法.ベンゼンスルホン酸ナトリウムに固体の水酸化ナトリウムと少量の水を加え,320 ℃ 付近で融解し,フェノールを合成するなどはその例である.また,分子内や分子間の脱水素,脱水による縮合環化反応にも使われる.【】不溶性の無機物質を固体の水酸化アルカリと加熱融解し,可溶性物質に変化させる化学分析の操作の一つ.金属酸化物,硫化物,硫酸塩,ケイ酸塩の分解に用いる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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