日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルコア」の意味・わかりやすい解説
アルコア
あるこあ
Alcoa Inc.
アメリカ最大のアルミニウム製造会社で、世界でも最大手に位置する。アルコアは旧社名アルミナム・カンパニー・オブ・アメリカAluminum Co. of Americaの略称であったが、1999年1月アルコアを正式社名とした。1886年、冶金(やきん)学者のチャールズ・ホールCharles Martin Hall(1863―1914)が、純アルミナを溶融氷晶石に溶かして直流電解するアルミニウム精錬法を発明する。このホール特許(1889年確定)に基づいて、ホールと企業家のアルフレッド・ハントAlfred E. Hunt(1855―1899)が、1888年ペンシルベニア州ピッツバーグに設立したアルミ製錬会社ピッツバーグ・リダクションPittsburgh Reduction Co.がアルコアの前身である。ピッツバーグ・リダクションはアルミニウム製造について技術的に独占的地位を占めてはいたものの、金融的基盤が脆弱(ぜいじゃく)であったため、1889年メロン財閥の金融的援助を、さらに1890年にはその出資をも仰がなければならなかった。以後、同財閥の中心的企業の一つとして急発展を遂げ、1907年には社名をアルミナム・カンパニー・オブ・アメリカと改めた。ホールの特許権は1906年に消滅したが、同社は内外資本のアルミニウム生産への参入を阻止し、第二次世界大戦まで国内的に一社支配の完全独占企業の典型として存在を続けた。その後、反トラスト法違反訴訟を恐れて意識的に他社の参入を認めたため、1980年には独占企業からアメリカ市場の30%前後を占める寡占企業の一つとなった。
アルコアはその設立の当初から、世界のアルミニウム産業における主要企業の一つとして対外進出を図るとともに、国際カルテル活動を続けてきたが、1928年にはその在外活動を一元的に管理するためにカナダ法人のアルミニウム・リミテッドAluminium Ltd. Co.を設立した(1966年にアルキャン・アルミニウムAlcan Aluminium Ltd.と改称)。しかし、1950年の反トラスト法違反判決の結果、同社は1960年までにアルコアから完全分離されることになり、現在では所有関係での結び付きはなくなった。
1999年8月、アルキャン・アルミニウム、フランスのペシネーPechiney SA、スイス最大のアルスイスを擁するアルスイス・ロンザ・グループ(アルグループ)Alusuisse Lonza Group Ltd.のアルミ大手3社が合併を発表したが、2000年6月ヨーロッパ委員会による反対を受けて実現しなかった。こうした業界再編の動きのなかで、1999年8月アルコアはアメリカの同業大手レイノルズ・メタルズの買収を発表し、2000年5月に完了した。両社の売上高合計は約210億ドル(1999年ベース)に上り、アルコアは世界最大級のアルミニウム・メーカーとしてその地位を保持する。2008年の売上高は269億0100万ドルであったが、7400万ドルの損失となった(前年の純利益25億6400万ドル)。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]