モンゴル高原西部を北西から南東方向に走る山脈。モンゴル高原の西部境界であり、ジュンガル盆地の北部境界となっている。北西部は西シベリアの低地に接続する。ロシア連邦、モンゴル、中国にまたがり、全長約2000キロメートル。ロシア・アルタイ山脈、モンゴル・アルタイ山脈、ゴビ・アルタイ山脈からなる。なお、ロシア連邦に属する一部地域が1998年に世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産)。
ロシア・アルタイ山脈は、その東部において西サヤン山脈、タンヌ・オラ山脈とつながる、アルタイ山脈中もっとも高い部分であり、最高峰はベルーハ山(4506メートル)で、オビ川の支流ビヤ川、カトゥン川、イルティシ川の支流ブフタルマ川などが発する。年降水量は500~1000ミリメートル以上の所が多く、山地ツンドラ、タイガ、森林ステップなどが分布する。地下資源は、金、鉄、水銀、希金属などを産する。住民はトルコ系のカザフ人、アルタイ人、ハカス人で、牧畜、農業を営んでいる。
モンゴル・アルタイ山脈は、モンゴル西端にあるタバン・ボグド山(4355メートル)からギチゲネ山脈までの部分で、長さ約900キロメートルである。最高峰はモンフハイルハン山(4362メートル)。西部の南斜面は中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区に属する。ロシア・アルタイ山脈とともに4000メートル級の峰が多く、氷河も多い。イルティシ川やホブド川が発する。年降水量は200ミリメートル以上の所が多く、高山帯、森林ステップ、純ステップなどが分布する。地下資源は石炭、鉄、金、鉛、銅、石材類が豊かである。住民は西部にトルコ系のカザフ、ウリヤンハイ、西モンゴル系のトルグート、ザハチン、東部にハルハがいる。いずれも牧畜をおもに営んでいる。
ゴビ・アルタイ山脈は、バヤンツァガーン山からフルフ山までの部分で、長さ約600キロメートル。前述した二つの山脈より低く、幅は狭く、また断続的である。最高峰はイフ・ボグド山(3957メートル)で、年降水量は100~150ミリメートル以上、砂漠性ステップと砂漠が分布している。住民はハルハで牧畜を営んでいる。
アルタイ山脈にはもとトルコ系遊牧民が居住し、彼らはこの山をアルトゥン・イシュAltun Yish(金山)と称した。トルコ系の突厥(とっけつ)はここから興って北アジア、中央アジアを支配する国を建て、ウイグルもここを領土の一部にした。のちモンゴル帝国勃興(ぼっこう)時にも、トルコ系のナイマンが居住していた。モンゴル帝国以後、しだいにモンゴル人が居住するようになり、その後曲折を経て、現在のような民族分布となった。
[吉田順一]
西シベリア南東部からモンゴル高原へ北西~南東にのびる全長約2000kmの山脈。モンゴル・アルタイ,ゴビ・アルタイ,ロシア・アルタイに大別される。モンゴル・アルタイは中国ジュンガル(準噶爾)盆地の北を走り,最高峰は中国側のナイラムダール(友誼峰,4374m)。その付近のモンゴル側のフィティン峰(4370m)はモンゴルの最高峰。山麓は半砂漠,2000~3000mには高原状の草原,山頂付近には氷河(最大は全長約20kmのポターニン氷河)がみられる。この南東に1500~2500mの断層地塊山脈で,モンゴルを走るゴビ・アルタイ(最高峰バグン・ボグダ,3957m)がのび,これはゴビ砂漠や陰山山脈へとつづく。モンゴル・アルタイの北西部は多数の山脈が入り組みアルタイ山脈最高のベルーハ峰(4506m)のあるロシア・アルタイで,その氷河群は西シベリアのオビ川水系の源になっている。年間降水量は西シベリアやカザフ地方側山麓で1000~2000mmで,農業がみられるが,モンゴル側は300mm以下である。ただ,この山脈の草原は,古くから遊牧民の活動舞台になってきた。アルタイはモンゴル語で〈金の山〉を意味し,ロシア・アルタイ南西部はかつての金産地であり,今日でも金,水銀,鉛,亜鉛などの鉱産資源がみられる。
執筆者:小野 菊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
モンゴル高原と中央アジアとの境界をなす山脈。鉱物資源,特に金鉱にめぐまれ,中国では古くから「金山」と呼んだ。アルタイという名もトルコ語,モンゴル語のaltun,altan(金)に由来する。古来多くの民族が興亡し考古学的遺跡が多い。突厥(とっけつ)はこの南西麓から興り,その後カルルク,ナイマンなどの住地となった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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