日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルプス造山帯」の意味・わかりやすい解説
アルプス造山帯
あるぷすぞうざんたい
中生代白亜紀から新生代新第三紀にかけて(広義には現在まで)のアルプス造山運動を受けた地帯。アルプス変動帯ともいい、ヒマラヤ造山帯とあわせてアルプス‐ヒマラヤ造山帯とよぶこともある。ヨーロッパ・アルプスが模式地であるが、普通、アフリカのアトラス山脈に始まり、ヨーロッパ・アルプス、イランのザーグロス山脈、ヒマラヤ山脈、ミャンマー(ビルマ)のアラカン山脈などを経てスマトラ島に至る長大な地帯をさす。アフガニスタン以西では南北2列に分かれる。これらの地帯は、後期古生代から古第三紀にかけてテチス海とよばれる海が、北のローラシア大陸と南のゴンドワナ大陸に挟まれて存在していた場所である。テチス海に堆積していた厚い堆積物が、両大陸の衝突による造山運動を受けて、激しく褶曲(しゅうきょく)変成し、高い山脈を形成した。長い間侵食にさらされていた古い造山帯と異なり、現在も隆起運動が続いているため、「世界の屋根」とよばれるような険しい高山地帯をなす。
アルプス造山帯の特徴は、側方からの著しい短縮によって生じたと考えられる横臥(おうが)褶曲や衝上(しょうじょう)断層によるナップ群が発達していることである。スイス・アルプスのグラールス衝上断層によるナップは、その代表例である。ヨーロッパ・アルプスの主体をなす東西アルプスは、それぞれが幾層にも積み重なったナップ群からなるが、そのうえ、さらに東アルプスが西アルプスの上に乗り上げた構造をしている。このような褶曲山地をアルプス型構造山地といい、断層地塊運動を主とするドイツ型構造山地と区別される。また、アルプス型構造山地をつくるような岩石の塑性流動の著しい造構運動をアルプス型造山運動という。
[岩松 暉・村田明広 2016年2月17日]