日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アーマー(Ayi Kwei Armah)
あーまー
Ayi Kwei Armah
(1939― )
ガーナの小説家、文明評論家。ガーナ大学、アメリカのハーバード大学、コロンビア大学を卒業。1963年にアルジェリアに渡ったが、過度の神経衰弱にかかり入院、帰国後教師をしながらテレビドラマの脚本を書いた。一時期パリで雑誌『ジュヌ・アフリーク』の編集に従事。のちアフリカ、アメリカの大学で教え、1990年代はセネガルで過ごした。ガーナ独立後白人にかわって支配層に収まった「白いアフリカ人」たちの尊大さ、乱脈、奢侈(しゃし)をやり玉(だま)にあげた処女作『美しきもの、いまだ生まれず』(1968)で一躍有名になる。『断片』(1970)、『なぜにわれら、かくも祝福さるる』(1972)で、引き続き現代アフリカ社会の退廃に幻滅をぶちまけ、「美しきもの」をおのずと過去に追求する姿勢を示すようになり、その後の小説『二千の年季』(1973)、アシャンティ王国滅亡の悲史を背景とする代表作『ヒーラーたち』(1978)で、アフリカに固有の伝統的価値体系の発掘を目ざす。また、アイシス――オサイリス(イシス―オシリス)神話を下敷きにした『立ちあがるオサイリス』(1995)では、こうしたアフリカの過去と現在の悲劇を検証しながら、至福の未来の到来を夢みている。一方、文明評論家としては、雑誌『ウエスト・アフリカ』『プレザンス・アフリケーヌ』などで、伝統文化擁護の立場から、活発な論陣を張っている。
[土屋 哲]