イブン・ユーヌス(読み)いぶんゆーぬす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブン・ユーヌス」の意味・わかりやすい解説

イブン・ユーヌス
いぶんゆーぬす
Abū-l-asan ‘Alī ibn abī Sa‘īd ‘Abd al-Ramān Ibn Amad Ibn Yūnus al-adafī al-Mi
(?―1009)

イスラム天文学者カイロで活躍し、同地で死んだ。当時エジプトはファーティマ朝6代目のハーキムal-Hākim(985―1021)の治世で、カイロに天文台主体とした「知恵の館」dār al-ikmaが設立された。彼はここで天文学上の多くの係数を測量して天文表を改良し、後援者の名をとって「ハーキムの天文表」al-kabīr al-ākimīとよんだ。この表には古今の食と合・朔(さく)、天文的常数の修正値、土地測量の計算が含まれている。また、三角法の新しい成果が盛り込まれており、今日の
  cosαcosβ=1/2{cos(α+β)+cos(α-β)}
に等しい式を採用している。

平田 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イブン・ユーヌス」の意味・わかりやすい解説

イブン・ユーヌス
Ibn Yūnus

[生]?
[没]1009
イスラムの天文学者。エジプトのカイロで天文観測を行なっていたが,990年ファーティマ朝カリフ,アジーズの命を受けて天文表の作成を始め,次代カリフ,ハーキムのときに完成した (1007) 。『偉大なるハーキムの天文表』 al-Zīj al-kabīr al-Hākimīがそれである。以前からの天文観測の記録に彼自身の観測を加えたもので,その正確な観測値は天文学の貴重な資料である。

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