カーヌーン(読み)かーぬーん(英語表記)qānūn アラビア語

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーヌーン」の意味・わかりやすい解説

カーヌーン
qānūn

イスラム諸国の世俗法。語源ギリシア語の kanonからきた。キリスト教社会における教会法 canon lawにほぼ相当するシャリーア shari'aとは別に,諸地域の慣習法であるアーダー'āda,ウルフ'urfと同義語。イスラム教の発展に従い,風俗習慣を異にする地域が包含されると,シャリーアと強く衝突しない各地の慣習法は温存された。カーヌーンには,慣習 (アーダー) に基づいたものが多いが,なかにはオスマン朝の「カーヌーン・ナーメ」 Qānūn Nāmehのように,君主が政治運営の必要上から,自己の意思に基づいて制定したものをいうこともある。ペルシアでは,1906年カージャール Qājār朝で制定した憲法をカーヌーンと呼んでいる。

カーヌーン
qānūm

アラブ諸国およびトルコの古典音楽に使われるツィター属の撥弦楽器梯形の平板な箱の上に 24~26コースの3重弦 (羊腸またはナイロン) が張られ,共鳴板の右側約3分の1には薄い皮が張られ,駒はこの皮の上に立てられる。斜めに切込まれた箱の左端には弦を調律するピンが並び,上駒に当る部分には,微小な音程をただちに上下に変えうる装置がある。奏者は楽器を水平に膝の上に置き,両手の人差指にはめた義爪でかき鳴らす。古典音楽では主としてタクシームを演奏し旋律の主要音を強調しながら,速いトレモロ風のパッセージを必要とし,めまぐるしく人差指を動かす高度な演奏法がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーヌーン」の意味・わかりやすい解説

カーヌーン
かーぬーん
qānūn アラビア語

アラブ諸国やトルコのチター属の撥弦(はつげん)楽器。古典音楽の旋律楽器として使用される。その起源は明らかでないが11~12世紀にはすでに西アジア各地やスペインで用いられていた。現在の形態は、表面片側が羊皮からなる台形の平たい木製共鳴箱の上に、75本前後のガット弦かナイロン弦を張ったもの(3弦ずつ同じ音に調弦する)が一般的で、弦の振動が駒(こま)を通して羊皮に伝わり、独特な音色が得られる。膝(ひざ)の上か台の上に楽器を置き、両手の人差し指プレクトラム(義甲)をつけて、トレモロ奏法を主体に演奏する。また、使用する旋法にあわせて微小音程を調節できる装置を駒に付したものもある。

[山田陽一]


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