改訂新版 世界大百科事典 「イワヒバリ」の意味・わかりやすい解説
イワヒバリ (岩鷚)
accentor
スズメ目イワヒバリ科Prunellidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は全長15~18cm。地上性で,細くとがったくちばしとしっかりした脚をもつ。羽色は褐色や灰褐色のじみな色彩のものが多く,雌雄同色である。ヨーロッパ,北アフリカ,アジアの山地に12種が分布し,冬には垂直移動をするか,比較的短距離の渡りをする。
イワヒバリPrunella collaris(英名Alpine accentor)は全長18cm,全体に暗褐色のじみな色彩をしていて,のどには細かな白斑があり,翼には2本の細い白帯がある。ヨーロッパの中部~南部からカフカス,イラン,ヒマラヤ,中央アジア,南シベリア,中国,日本にかけ分布し,日本では,本州の中部~北部の高山帯ないしハイマツ帯より上部の岩場や草地にすむ。人をあまりおそれない鳥で,ときには2~3mまで近寄ることもでき,富士山や日本アルプスの山頂では地上で両脚をそろえてはねたり,歩き回って昆虫類やクモ類をとる姿や岩の上でさえずる姿をよく見かける。さえずりはヒバリに似た美しい声で,ときどきヒバリのように飛びながらさえずることもある。6月から7月に,岩石の間や岩の下のくぼみに営巣し,1腹3~4個の青色の卵を産む。秋から冬の間は,高山帯から下に移動し,低山帯上部くらいまでの岩のある山地草原や崖地などで越冬する。数羽くらいの小さな群れになり,草の種子や木の実などを食べる。この種は北アフリカ,ヨーロッパ,アジアの高山帯に分布し,冬は垂直移動をする。日本のイワヒバリ科の鳥には,ほかにカヤクグリとヤマヒバリがある。カヤクグリは北海道,本州,四国で繁殖し,日本特産種。ヤマヒバリP.montanellaはシベリア東部で繁殖し,日本では迷鳥かまれな冬鳥として見られる。
執筆者:齊藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報