日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォーナー」の意味・わかりやすい解説
ウォーナー(Langdon Warner)
うぉーなー
Langdon Warner
(1881―1955)
アメリカの東洋美術研究家。ハーバード大学卒業後、来日(1904)して岡倉天心の指導のもとで日本の古美術を研究、また西トルキスタンの調査に参加。のちボストン美術館東洋部副部長をはじめアメリカ各地の博物館に勤務、しばしば日本や中国を訪れ、敦煌(とんこう)にも足をのばして(1923~24)調査研究の成果をあげ、『イースタン・アート』誌を編集、ハーバード大学300年祭記念日本美術展覧会開催のためにも尽力した。第二次世界大戦中は、奈良、京都などの古美術を爆撃から守るために努め、戦後は来日して連合国最高司令部民間情報部美術顧問を務めた。日本の古美術保護の功績は大きく、没後、勲二等瑞宝章(ずいほうしょう)が贈られた。多くの著書のうち日本で翻訳出版されたものに『不滅の日本芸術』『日本彫刻史』などがある。
[鹿島 享]
『寿岳文章訳『不滅の日本芸術』(1954・朝日新聞社)』▽『宇佐見英治訳『日本彫刻史』(1956・みすず書房)』
ウォーナー(William Lloyd Warner)
うぉーなー
William Lloyd Warner
(1898―1970)
アメリカの文化人類学者。カリフォルニア大学、ハーバード大学卒業後、シカゴ大学教授となる。最初はイギリスの機能的社会人類学の手法を用いてオーストラリアの先住民社会を研究したが、やがてその人類学的方法をアメリカの都市コミュニティの調査研究に応用し、多数の地域研究を発表した。その特色は、第一に、地域住民の日常生活の客観的様式とその社会的威信に対する相互評価を指標として、地域社会の階層構造を分析する方法論を提示したことにある。これは、生産関係における階級対立を明らかにしようとするマルクス主義的階級理論に対して、社会関係における連続的、統合的な地位序列構造を明らかにする成層理論であり、日本の階層構造の研究にも多大の影響を及ぼした。第二に、労使関係やストライキを経営管理機構の内部問題に限定してみるのでなく、地域を超える資本の統轄機能や地域内の階層構造の変動との関連でみる新たな産業社会学の視点を確立した。主著に『ヤンキー・シティ・シリーズ』(1941~1947)、『アメリカの社会階級』(1949)などがある。
[杉 政孝 2018年11月19日]
ウォーナー(Rex Warner)
うぉーなー
Rex Warner
(1905―1986)
イギリスの小説家。オックスフォード大学卒業。1937年カフカの影響の濃い『野鴨(のがも)狩り』で文壇に登場。理想主義者の教授が小国の首相に任ぜられ、政治の現実に敗れてゆく『教授』(1938)、伝統と革新の対立を主題にした『空軍基地』(1941)など、イギリス的良識の色濃い寓話(ぐうわ)のほか、第二次世界大戦を扱った『殺されたのはなぜか?』(1943)などがある。ギリシア神話や古典の英訳紹介も多い。
[鈴木建三]